小4解散サイトにみる、フィクションの正しいハンドリングとは?
現実には起きない奇妙なことを、観客の目の前でみせるマジック。それを仕事にしているせいか、いつも「ウソ」と「社会」についての考えをめぐらせています。「政治にウソはダメ!」とか「子供になりすますなんて卑怯!」など、あの件の是非は、ネット論客に語り尽くされているのでここでは触れません。でもウソとホント、フィクションとノンフィクションの境界線って、じつはとっても難しいんです。
エンターテイメントか科学で違う、ウソの役割
日本語で「嘘、ウソ」という語感がショッキングなせいもあり、反射的に嫌悪感を感じる人もたくさんいます。そのかわり、似た意味の言葉で「フィクション」、日本語なら「装う」「逸話」「伝説」など、少し柔らかく、あまり人々に糾弾されにくい表現もあります。たとえば、SF映画の特撮やCGで、現実には存在しない宇宙船が画面に現れても、観客は怒ったりしません。
今年話題になった映画『ゼロ・グラビティ』(原題:Gravity)では、フイクションにもかかわらず「このシーンは現実にはありえない!」なんて話が議論になりました。もともとはフィクションなので、「ありえないシーン」があるは当たり前です。しかし、そんな議論が生まれるのは「いかにも現実に起きそうな設定」だからこそ。フィクションでも、現実に近づくとナーバスになる人も増えていきます。
じつは大切なラベル ラベルやレッテルに助けられる人々
僕のような仕事、マジシャンが「嘘つき!」「卑怯者!」と糾弾されたり、炎上したりしないのは、「マジシャン」というラベルにあります(友人は家族は、筆者をそう糾弾することもありますが……汗)。一般的に「レッテル貼り」「ラベリング」などの言葉は、ネガティブな表現に使われることも多いのは事実。しかし、僕の肩書き「マジシャン」には「不思議なことを起こすように装った人」という言葉が含まれる。だからこそ、観客に糾弾されずに済んでいます。
いきなり街で刃物で切りつければ重大犯罪ですが、病気や怪我を治療するため、医師が患者を皮膚切っても許されることと同じです。本人についたラベルによって、面倒な説明を省き、社会がスムーズに動くようにしているわけです。
同じように作家、漫画家、作詞家、アーティストは「現実とは少し違うこと」を作品内で表現しても許されます(あまりに、現実ばなれしたことを表現することも可能ですが、そうなると観客がついてこないことになりますが……笑)。
一方で、科学者、行政や司法に関わる人々が事実とことなることを表現すれば、大きな問題になります。昨今の報道機関による虚偽報道問題が未だに尾をひいているのも、そのジャンルだからこそ。ジャーナリストが「言論や表現が守られる」は、「できる限り嘘を書かないようにする」という条件になっているからです。
筆者の仕事、マジシャンなら「仕事中に嘘をついてもOK」と引き換えに、「他のラベルでは使わない」というのが社会との約束。つまり、超能力者や宗教家のフリをしたり、物を浮かせて「新発明」「永久機関」なんて投資家にプレゼンしてはダメなわけです。もちろん、マジックの番組以外で他人のお金が消えたりしてもダメ。マジシャンだからと「いつでもウソはOK」なワケではないんです。
(次ページ「炎上しやすいウソとは?」へ続く)
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