しかし、結局は実際の音を聞かなければ分からない
──といったいろいろな定義があるのですが、私は買うときのひとつの安心感にはなるけど、「本質的な話ではない」と思うんですね。
ハイレゾだから音がいい、ローレゾだから音が悪いとは絶対的には言い切れない。ハイかローかは(音楽の情報を載せて運ぶ)荷台の大きさを言っているだけなんですよ。大容量が一度に運べたとしても、載せているものが安物では内容が薄いものになるし、荷台は小さくても、中身がカッシーニみたいないい家具だったらそれでいいじゃないといたところもあって。
だからCDでもいい録音はあるし、ハイレゾでも音が悪い場合もある。やっぱり実際の音を聞いてみて、数字にこだわらず、ハイレゾの良さが分かればそれを選べばいい。
一例を挙げると、リンゴ型のUSBメモリーに収録された、ビートルズ唯一のハイレゾ音源があるのですが、これに入っている音源は、44.1kHz/24bit。JEITAの基準でぎりぎりハイレゾと言える品質です。しかし、めざましく音が良いわけですね。
確かにハイレゾを推進している人たちの間では、96kHz/24bitぐらいからハイレゾだぞという意識はありますが、ユーザーの立場から言えば、そういうフォーマットとは別に、コンテンツそのもの音がいいことのほうが重要ですから「まずはそこをきちんと吟味しましょう」ということですね。
アップサンプリングのハイレゾは偽なのかという議論
また、ビクターがやっている“K2HD”の技術(関連サイト)は、44.1kHzで録音されたCD用の音源を高品質にハイレゾ化しようというものです。アナログ時代のマスターテープには無限の情報量が含まれていますが、CDが登場した瞬間、44kHz/16bitでデジタル録音しましょうとなった。その後、1990年代から20bitで録る技術が出てきて、現在ではハイレゾで録ってそれをCDのフォーマットにダウンコンバートしてリリースする流れになっています。
CD品質の録音しかない1980年代の音源を、よりよく聴かせるためにはアップコンバートするしかない。アップコンバートはそのニーズに応えるものです。いろいろな方法がありますが、ビクターのK2テクノロジーはスタジオミュージシャンが認めた方法を方程式として、一般化して当てはめていこうという手法です。由来で言えばアプコンですが、じゃあその音はどうなのか、実際に聴いてみて、きちっとハイレゾの品質であると感じられるかどかが、重要なんじゃないかと思います。
途中の過程はマーケティング的には重要だけれど、最終的にはユーザーの体験、音で決めるのがいいかと思いますね。
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