スペックは読めないけど、人は信用するアーリー/レイトマジョリティ
アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に横たわる溝は「自分から情報を探し求める人」と「情報の受けるばっかりの人」の間のギャップと考えることもできます。つまり、新商品などが出たときに、企業やインフルエンサー(カリスマみたいな人)が熱弁するスペックや新機能を理解できる人と、自分が知っている友人や家族から「アレ、便利!」と聞かないと買わない人の差でもあります。
たとえば、デジカメなら「1684万画素」はわからないけど、「〇〇さんのくれる写真はキレイ」はわかる。そういえば、テレビショッピングでは、友達っぽいというか、消費者っぽい人、体験者がよく出演します。あれって、友人の代わりになっているのかぁ。う~ん、テレビショッピングのマーケティング、恐るべし……。
アーリー/レイトマジョリティは「実利主義者」とも呼ばれますので、ダイエット商品なら、自分に近い人が登場して「こんなに痩せましたぁ…」というビジュアルやストーリーが効果的なんですよね。逆に、イノベーターやアーリーアダプターは「あれって、タレント事務所の人でしょ…」とか「画面の下に小さい字で『適切なカロリー管理と運動を併用しています』って書いてあるじゃん!」なんて突っ込むタイプ。広告や宣伝の手法が対象によって異なるのは明らか。キャズムがあるのはあたりまえです。
ただし、最新技術や価格が市場でこなれて(技術が安定して、価格が安くなって)からという、最新情報は入手しつつも待ち伏せタイプのアーリー/レイトマジョリティや、デジカメは最新を買うけど冷蔵庫は古いまま、なんて偏りタイプも存在します。
キャズムを超えるには…
専門家が言う「キャズムを超える方法」の第一歩は、メインストリーム市場のどこか1つに足がかりを築くこと。
先日、ワールドカップを観ていたら、たまに観客席が写るシーンで結構GoProを手に持って応援してる人が目立ちました。手に持ってる人もいれば、一脚(棒)に取り付けて持ち上げて、高いところから撮ってる様子。1つの足がかりに成功したら、ボーリングのピンを連鎖して倒すように市場全体を意識することが次のステップ。サーファーやモータースポーツの世界では名が知れ渡ったGoProの姿が、全世界にチラリと放映された瞬間でもありました。
そういえば、iPadが日本で販売された数日後に新幹線に乗ったら、グリーン車でiPadを使ってる人が結構いて「おっ!これは売れそうな香りが…」と感じたことを覚えています。冒頭に紹介したグラフなら、イノベーターやアーリーアダプターに相当するような人たちだと思いますが、あっという間に、キャズムを超え、友人や知人が持っている姿も珍しくなくなりました。
そうなると、ボーリングのピンが倒れるように、連鎖的に市場に広まっていくのは時間の問題。以前は、プロダクトプレースメント(スポーツの試合で選手が身につけたり、映画やドラマに商品が登場することでの宣伝)のような手法も効果をあげましたが、これからはテレビショッピングとネットショッピングのハイブリッドのような、もう少し親近感のあるマーケティングが流行るような気がしています。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。
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