日本のミリタリーファンが空と海に偏る理由
ゴースト結城 「旧日本軍の兵器ってマニアの間で賛否両論があります。特に飛行機と船に関しては。『零戦は軽くて航続距離もあって傑作機だ』って人もいれば『ヤワな機体で無線も積んでないし、近代的な空中戦のことをぜんぜん考えてない』という人もいる。海に行くと、『戦艦大和は最強だ』って人がいる一方で『そもそも航空機時代を切り開いたのは日本軍だったはずなのに、いつまでも艦隊決戦にこだわっていたから……』とかね。
ところが陸になると、ほぼ異論なく『日本軍の戦車はイケてないよね、以上』みたいな状況です。そんなわけで(戦車は)順番を付けると、どうしても後回しになりがちなんですよ。だから日本で戦車を好んでいらっしゃる派閥・流派の方はですね、たいていドイツ軍から入っている」
―― あ、確かに。ドイツ戦車の名前のほうが身近ですね。パンターとかヘッツァーとか。
ゴースト結城 「そんな案配で僕も戦車に関してはそんなに入り込まなかったんですけど、唯一思い入れがあるのは四式中戦車。なぜかと言えば、松本零士先生の『戦場漫画シリーズ』に登場していたから。多くのミュージシャンがビートルズに影響を受けたのと同じように、松本零士先生は日本のミリオタに多大なる影響を残しています。
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戦場まんがシリーズ〈2〉鉄の墓標 (少年サンデーコミックス)松本 零士(著)小学館
Appleユーザーにおけるスティーブ・ジョブズに対して、僕らミリタリーファンは松本零士を挙げたいですね。異論のある人は多いと思うんですが、苦情の電話は受け付けていないということで(笑)。
戦場漫画シリーズは、戦うことの虚しさみたいなものを描きつつも、たまに“もしこの兵器が間に合っていたら……”的なifストーリーがあるんです。そのうちの1つに『鉄の墓標』という作品がありまして。実用試験中の四式中戦車がたった一両で、大量のM4相手に無双するんだけれども、最後は多勢に無勢でやられてしまって、やっぱり戦争って虚しいよねって終わる話なんですけど、そこに痛快な物語を感じまして」
―― World of Tanksでは日本技術ツリーのTier6に中戦車『Chi-To』として登場予定ですね。
数字を見ると日本の兵器がわかる!?
ゴースト結城 「そういえば“チヌ”とか意味わかりますか?」
―― 聞いたことはありますが、なぜ二文字で呼ばれているのかは知りません。
ゴースト結城 「意外と単純な名前の付け方で、最初の“チ”は中型のチ、そして二文字目はイロハなんです。だからチハとチヌなら、ヌのほうがイロハ的に後ろだからおそらく強いのだろうと見当付けていただければ……ああ、どうしても蘊蓄で人を唸らせたいという、さもしい心が(笑)」
―― 原初的衝動が。
ゴースト結城 「この悪癖が最終的に人を遠ざけていくんですけど、言わずにはいられない。メールで喧嘩していると、自分が言い終わってやりとりが終了しないと気が済まない人っているじゃないですか。会社の取引先にいると一番困るタイプ。ミリタリーファンはあのグループに属していますから(笑)」
―― ええ~!?
ゴースト結城 「よく九七式とか四式とか出てくるのですが、これは皇紀基準だと覚えておくとわかりやすいと思います。昭和15年が皇紀2600年で、その下二桁をとって正式採用された兵器に付けています。たとえば2601年だったら、“一式なんとか”になりますね。ゼロ戦は2600年採用だから零式。ところが陸軍だと同じ2600年でも百式司偵とか百式重爆撃機とか、三桁を使うこともあるからややこしい。
World of Tanksに留まらず、零年より前の九なんとかと表記されている兵器は、第二次世界大戦においてはちょっと時代遅れ。零式前後の兵器が実質的に主力兵器でした。
そう考えると、四式なんてもう昭和19年ですよ。この辺になると、やっと列強並みの兵器ができるのですが、いかんせん資源も底をつき、工場も破壊され、コンセプト的には良いのだけれど配備はされなかった兵器が、四式、五式のあたりにうじゃうじゃと。
そしてこの辺からマニアのたられば話が始まるわけです。日本軍マニアにとっては四式、五式のあたりに大好物が転がっている(笑)。ミリタリーに深く入り込まなくても、この数字の使われ方だけ覚えておけば、なんとなくのイメージがつかめるでしょう」
―― 中の人が言うには、日本の戦車はミステリアスだと。なんの話かと思ったら、占領前に廃棄したせいで幻になってしまった兵器が多いと。そのなかでも戦車は資料が少ないそうです。
ゴースト結城 「ちなみに先ほど話題に出た四式中戦車も、試作車両を米軍が本国に持ち帰ろうとして船ごと沈没しているので、1台も残っていないんです」
―― 本当に幻なんですね。
ゴースト結城 「多少残っていた書類が後日発見されただけなので、性能には諸説あるのですが……むしろそれが我々の活躍のしどころですよ(笑)。じつはこうだった、もしこうだとしたら、なんてね」
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