本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
Apple製品は「ハイレゾレディ」か?
既報のとおり、IFA 2013でSONYが「ハイレゾ対応」を前面に打ち出した製品を多数発表した。ウォークマン「F880」シリーズ、ポータブルヘッドフォンアンプ「PHA-2」、HDDオーディオプレーヤー「HAP-Z1ES」など、ハイレゾ対応の専用ロゴまで用意する本気度だ。これまでもハイレゾ対応をうたうオーディオ機器は存在したが、対象はコアなオーディオファンだった。SONYの戦略変更は、マーケティング用語でいうところの“キャズム超え”を意識したものと考えられ、これを機にオーディオ機器のハイレゾ対応が一般化する可能性を指摘しておきたい。
従来のデジタルオーディオは、音楽CDの可聴帯域(20Hz〜20kHz)およびサンプリング周波数(44.1kHz)、量子化ビット数(16bit)を前提にすることが多く、MP3やAACなどロッシーコーデックにしても、音楽CDをソースにすることが暗黙の了解となっていた。ビットレートを増やすなど高音質化の取り組みは見られたが、iTunesにしても、iTunes Storeにしても、扱うサウンドデータは上述のスペックにきれいに収まるはずだ。iPhoneなどiOSデバイスにしても、アプリレベルでは96kHz/24bitなどハイレゾ品質の音を再生できても、出力段階ではハイレゾ未満(最大48kHz/24bit)にまるめられてしまう。
だからApple製品は「ハイレゾレディ」ではない……かというと、そうではない。確かに、iTunesを中心とした音楽生態系はハイレゾ未満の音源が中心だが、96kHz/24bitなどハイレゾ品質の音源を再生するハードウェアがMacには搭載されている。MacBook ProやMac miniのオーディオライン出力/ヘッドフォンミニジャックは、光デジタルオーディオ(S/PDIF)出力を兼ねているので、最大96kHz/24bitの信号を送ることができる。サードパーティー製のUSB-DACを購入すれば、それ以上の水準も狙うことが可能だ。
とはいえ、Appleが「ハイレゾ化」にだんまりを決めこむとも考えにくい。かつてiTunes Storeが扱う楽曲は、ビットレートが128kbpsだったが、その後256kbps(iTunes Plus)に引き上げられた経緯があるからだ。コーデックをどうするかなど課題は残るが、明らかに優れた音再生環境が普及段階に入っただけに、方向性としてはハイレゾに進まざるをえないことは確かだろう。
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