本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
iOS 7から「iPhoneでハイレゾ」が可能に
音質という観点から評価した場合、iPhoneは明らかに「カジュアル指向」のオーディオプレイヤーだ。内蔵DACの出力は最大48kHz/16bitという情報量で、96kHz/24bitや192kHz/24bitといったいわゆる「ハイレゾ音源」はカバーしない。ステレオミニ端子までの出力段に特別な高音質回路は採用されておらず、ソフトウェア的にも音質補正やバーチャルサラウンドといった機能はない。iTunes Storeが扱う楽曲はすべて圧縮音源のAAC、ビットレート256kbpsという条件にも、音に対する考え方が透けて見える。
だが、iOS 7ではひとつの変化が現れた。熱心なオーディオファンしか気付いていないが、Lightning/Dock経由での「USBオーディオ出力」が可能になったのだ。従来iPadのみに確認されていた裏ワザだが、iOS 7からはiPhoneでも動作する。簡単にいうと、iOS 7からはiPhoneとUSB DACの組み合わせでハイレゾ音源を楽しめるようになった、ということだ。
その際必要なアイテムが「iPad Camera Connection Kit」または「Lightning - USBカメラアダプタ」。そこにつないだUSB DACへiPhoneのオーディオ信号を出力すれば、フルデジタルの音を再生できる。標準装備の『ミュージック』は基本的にハイレゾ音源を扱えない -- 再生以前の問題として、たとえば192kHz/24bitのWAVをiTunesから転送できない -- ため、サードパーティー製再生アプリを用意しなければならないが、その点さえ理解すれば「iPhoneを核としたハイレゾ再生システム」を構築できる。
もっとも、iOS 7におけるUSBオーディオ出力の仕様変更は出発点にすぎない。ひと口にUSB DACといっても、数千円のものから3ケタ万円超のものまであるうえ、最終出力をヘッドホンにするのかアンプ経由でスピーカーにするのか、組み合わせは無数だ。1曲あたりのファイルサイズが数百MB超えも珍しくないハイレゾ音源のこと、iPhoneのディスク容量では不十分というそもそもの問題もある。「iPhoneでハイレゾ再生」は、ようやく入口へたどり着いたに過ぎないのだ。
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