本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
「FaceTimeオーディオ」に秘められた意味
いわゆる“テレビ電話”としての機能を提供する「FaceTime」は、iPhone 4とともに登場した。以降、FaceTimeカメラ(フロントカメラ)を搭載したiOSデバイスの多くがFaceTimeをサポート、携帯電話番号もしくはApple IDを目印に無料のビデオ通話サービスを利用できる。
ただ、iOSデバイスユーザーが諸手を挙げてFaceTimeを利用したかというと、そうではない。自分の様子が相手に丸見えとなるだけに、身なりを整えないことには短い会話すらはばかられる。用件を伝えるだけなら「メッセージ」、あるいはFaceTimeやTwitterのメッセージング機能で足りる。遠距離恋愛中のカップルや長期出張中で子に会えない親はともかく、すべてのユーザーにとって「映像」はコミュニケーションの必須要件ではないのだ。
ところで、FaceTimeには「会議ツール」としての側面もある。ビジネスの現場で利用される会議システムは、専用端末を利用して映像/音声でコミュニケーションを図る「ビデオ会議」、映像/音声のほかにデータ(ファイル)共有などウェブベースのサービスも含む「ウェブ会議」などに分類されるが、いずれもデスクトップ指向だ。しかしFaceTimeやSkypeはモバイル指向であり、屋内外を問わず利用できるなど会議システムに新しい要素を加える。Appleが戦略的なサービスと位置付けるのも肯ける話だ。
ビデオ会議/ウェブ会議システムの市場規模は大きい。国内だけを見ても、2014年度が420億円前後、2016年度が517億円(シード・プランニング発表「ビデオ会議・ウェブ会議の最新動向と将来予測」より、いずれも予測値)と急成長している分野だ。
そういった角度からFaceTimeを眺めると、iOS 7で音声のみの通話サービス「FaceTimeオーディオ」をスタートしたことは、ビデオ通話サービスがそれほど受け入れられなかったためのテコ入れ策ではなく、会議ツールとしての機能を拡充することが目的だと想像がつく。音声のみの通話サービスを用意して会議ツールとしての利便性を向上させる、それがFaceTimeオーディオの狙いなのかもしれない。
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