volca beats、volca bassときて、シリーズ最後の一台が「volca keys」。発売予定は7月中旬で、まだデリバリーは始まっていないものの、これもbeats、bass同様大人気で、予約が集まっているようだ。
3VCO、1VCF、1VCA、1LFO、1EGというスペックはvolca bassと同じ。ただ、同時発音数3音のポリフォニックという設定で、27keyのマルチタッチキーボードで和音が弾けるというのが、bassとの大きな違い。シーケンサー部はリアルタイム入力に特化していて、ステップごとのエディットはできない。が、全体的に演奏性を重視した設計で、ソロプレイにも向いている。
安価なアナログシンセ入門機として買っても満足できるはずだが、ソフトウェアシンセではなかなか難しい。強烈なリングモジュレーションで金属音が簡単に出せるのは魅力的。3VCOをユニゾンで鳴らした際の音の太さ、うねりの広がり感はやはり素晴らしい。ほかの2台同様、DAW用のライブ音源として使えば、音色やアレンジのバリエーションを広げてくれるのは間違いない。
bassとの違いはボイシング機能
―― で、最後のkeysの話です。これが一番最後の開発になったそうですけど。
坂巻 まずmonotribeをそれぞれ特化させようというところから、beatsとbassができて、音色のバリエーションは増えた。けれども、作れる音楽自体はmonotribeとあんまり変わらない。アシッドと呼ばれているカテゴリーのものになってしまいがちなので、そこにもう一音コードが入るだけで、もっといろんな音楽ができるんじゃないかと。それで作った、という感じだよね?
高橋 ええ、そうですね。
―― シンセの構成としては3VCOということで、bassと同じとも言えるんですが、bassとはどう違うんですか?
坂巻 bassは3オシレーター、keysは3音ポリのシンセなんですよね、やっぱり。
高橋 まずコードが弾けるんですけど、違いはボイシング機能があることですね。オシレーターをユニゾンで鳴らしてデチューンをかけたり、ポリフォニックでリングモジュレーションをかけたり。
―― ボイシングには6つポジションがありますね。3つのオシレーターを3音ポリで鳴らす「Poly」、3音を同じピッチで鳴らす「Unison」、オクターブ上下にばらして鳴らす「Octave」、5度上の音を一緒に鳴らす「Fifth」、ユニゾンでリングモジュレーションをかける「Unison Ring」、3音ポリでリングモジュレーションをかける「Poly Ring」と。最後のPoly Ringは何でモジュレーションをかけているんですか?
高橋 モジュレーションソースという概念はないんです。
坂巻 ただ出音を掛け算しているだけですね。
―― 和音として鳴っている構成音同士の掛け算ということでいいんですか?
高橋 そうです。だからオクターブや5度で鳴らすとあまり変わらないですが、それ以外のインターバルだとかなり壊れた音がします。それがPoly Ring。それからUnison Ringは単音ですけど、デチューンをかけてピッチの差を作ってやるに従って、モジュレーションがかかっていくんですね。
坂巻 音程が近ければあんまり変わらないですけど、デチューンで離していくとより金属的な音になります。
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ