Kinectで顧客の“迷い“をデータ化する
これ以外にもKinectの利用提案は幅広い。というのも、業務での戦略的活用にもKinectは広がりをみせようとしているからだ。
たとえば、バーチャルフィッティングルームでは、ディスプレーに表示された自分を見ながら、カバンや帽子などをバーチャルに表示。音声でカバンの色を変更するなど、カラーコーディネートを簡単に楽しめる。
実は、この仕組みは、単に試着ができるという利用だけには留まらない。ここでの動きは、すべてデータとして蓄積され、店舗側には「どのアイテムの試着が多いのか」「買った人と買わなかった人とではどんな違いがあるのか」「試着のため使った時間は製品ごとにどれぐらいの差があるのか」といったマーケティングデータも収集でき、これをもとにした分析が可能なのだ。
さらに、ショーケーストラッカーの取り組みでは、こうした業務利用の側面がさらに強い。ショーケーストラッカーでは、コンビニエンスストアなどの商品陳列棚の上にKinectを配置。これによって、ショーケースの前で、来店客がどんな行動をしたのかが分かるというものだ。
何が、いつ、何個売れたという情報はPOSでも管理可能だが、Kinectを活用したショーケーストラッカーの場合、「棚の前で、一度手に取った商品を戻した」「棚の前で、どれぐらいの時間悩んでから商品を購入したのか」といったことまで集計できる。
同じ商品を展示していても、どの高さの棚が売れているのかといった分析ができるほか、一度手に取った商品が返却された場合にも、商品の配置に何か問題があるのかが分析できる。データを分析すれば、単に色違いで迷っていたということも分かるわけだ。
「戻されている回数が多い商品の場合、陳列の場所を変えてみたり、そのあとに取った製品と、2種類を同時に購入すると割き引するキャンペーンを実施するといった工夫をすることで、販売数量の拡大につなげられるだろう」(日本マイクロソフト)。
これと同じように、商品の細かな動きをデータ収集しようとすると、ひとつひとつの商品にRFIDを貼り付けて、それを受信するアンテナを用意してなくてはならない。一方Kinectでは、投資額を低減しつつ、より詳細な情報収集とデータ分析が可能になる。戦略的にマーケティング戦略の立案へとつなげられるのだ。
こうしてみるとKinectは、ゲームという枠組みを超えて、ビジネスツールとしても活用される戦略的機器へと進化しているといえるだろう。
Kinectを、単なるゲーム用機器とあなどっていてはいけない。
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