NVIDIAが先日発表した「NVIDIA GeForce GRID」は、遠隔地のデータセンターにあるGPUを複数人が利用することで、どのような端末でも高品位なグラフィックスを備えたオンラインゲームを利用できる仕組みだ。詳細なリリースがないので一部推測が交じるが、今回はこれについて説明したい。
ゲームを「二人羽織」で遊ぶ!?
日本的、かつ誤解を受けかねない説明になるが、GeForce GRIDとは「二人羽織でゲームをする」ようなものだ。
PCゲーム業界はハードウェアの進化が非常に激しい。かつては「当時の最新CPUとグラフィックカードが揃っていないと、まともに遊べないゲーム」さえ存在した。今はそこまでひどくはないが、最新の3D技術を使った緻密なグラフィックをゲームとして楽しめるフレームレートで遊ぶためには、やはり高性能なCPUとGPUが必要だ。
とはいえ、一般的なコンシューマーがゲームのために、高価なCPUやグラフィックスカードに買い替えるのは難しいので、最新3D CG技術を使ったPCゲーム市場は敷居が高い。ゲームのためにハードウェアにお金をかけないライトユーザーまでターゲットに入れつつ、リッチな画面を実現するためにはどうすればいいのか? その回答が「描画は外部で行なえばよい」という考えだ。
GeForce GRIDはゲームの処理のほとんどを、サーバー側で行なう「クラウドゲーム」だ。一般的な対戦型ネットワークゲームの場合、サーバーはパソコン同士のユーザーデータを中継ぎしたり、アイテム管理を行なう程度であった。MMO(大規模マルチプレイヤーオンライン)型ゲームの場合は、サーバー側でゲームAIの動作やユーザーの操作に対する判定なども行なうが、画面にその結果を描画するのはユーザー側の端末(コンソール)の仕事だ。それに対してクラウドゲームの場合は、グラフィック描画処理もサーバー側で行なうので、コンソール側は強力な3D描画機能や物理演算能力を必要としない。ゲームの描画処理は、ゲーム提供会社が用意するデータセンターのGPU、現時点では「Kepler」が行なう。
GeForce GRID対応のゲームを遊ぶためにユーザー側に必要なのは、ある程度の帯域があり遅延の少ないネットワーク環境と表示装置、そして入力装置だけでよい。つまりパソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット、大画面で遊びたいならネットワーク対応テレビと入力装置があればいい。
二人羽織と言えば宴会芸やお笑い要素になってしまうが、GeForce GRIDのキモは遅延を感じさせない作りにある。

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