仮想化とクラウドがキーワード
NVIDIAがGeForce GRIDを実現可能としている根拠は、下の2つの図があらわしている。「プロゲーマー」はともかく、一般的なユーザーは200msぐらいが反応できる限界だという。
一方でネットワークゲームの場合、ユーザーからの入力をサーバーに送り、サーバーはその入力に基づいた行動結果を演算し、表示し、その画像をエンコードしてユーザー側に送って、ユーザー側端末はエンコードされた画像をデコードして表示するというプロセスを経る。だからどうしてもレスポンスが悪くなり、いわゆる二人羽織のような間の抜けたものになってしまう。
GeForce GRIDにはNVIDIAのこれまでのゲーム経験が生かされている。GPUが演算した画面情報を、GPU内部でエンコードすればロスが少ない。結果として、ゲーム機程度のレスポンスがネットワーク越しでも得られるというわけだ。さらにGeForce GRIDは仮想化によるメリットもある。
現在想定されているシステムの「最大4ユーザーまで」という制限は、あくまで現在のKeplerベースGPUの処理能力による制限である。同時実行のユーザー数を増やして規模を上げたり、消費電力を減らすという考えもあるだろう。もし、将来さらにGPUパワーの必要なゲームを提供したくなった場合は、GPU当たりのユーザー数を減らすという手もあれば、毎年のように改良が続く新しいGPUをサーバー側で導入してもいい。
実現の鍵を握るのは
広帯域で低レイテンシーなネットワークか?
クラウドゲームのサービスは、すでにアメリカなどで提供されているが、これをそのまま日本で遊ぶことはできない。単にサービスエリア外だからというだけではなく、アメリカのサービスを日本で遊ぶのはネットワーク遅延(レイテンシー)が問題になるからだ。
また、ゲームの最中は「ゲーム画面」の転送がずっと続くため、ネットワーク帯域もかなり必要となるだろう。下のグラフはネットワーク機器ベンダーであるシスコシステムズが発表した「全世界のモバイルデータトラフィックの予測 2011~2016年アップデート」より引用したものだが、クラウドゲームはビデオと同程度の帯域を必要するので、普及に当たってはネットワーク帯域の確保が重要となる。
一方で、ユーザー側のハードウェア投資やソフトウェアパッケージの購入コストは不要で遊べるので、気軽に体験することができ、ゲームを遊ぶための敷居は格段に低くなる。
ゲームの遊び方も変わるかもしれない。パッケージソフトがある程度の価格である以上、数多くのゲームを購入するのは少々無理がある。だがクラウドゲームならば、ゲームの時間貸しや月額会員制のシステムで、対象ゲームを遊び放題にすることも可能だ。逆に「ゲームは1日1時間!」と、長時間プレイを強制的に止めることもできる。
ゲームプログラムが手元に所有できないのは、既存のゲーム販売モデルに慣れたユーザーには不安かもしれないが、GeForce GRIDは特にコスト面で、ユーザーに受け入れられやすい技術ではないかと思う。
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