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なぜバイドゥはSimejiを買ったのか? 開発者から真実を聞く

2012年05月17日 12時00分更新

文● 美和 正臣、写真● 小林 伸

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Simejiのバージョンアップは
リリース以降、230回以上?

――Simejiの前身は2008年11月17日にGoogleサジェストを利用した「inJap」です。それが1日で破棄されて、11月18日に「Social IME」を使ったSimejiのVer.1が登場します。そこから5ヵ月間あって、2009年4月にSimejiのVer.2が出ます。これはNTTドコモの「HT-03A」に対応したものでしたよね。

足立:どちらかというとAndroid 1.5でようやくソフトウェアキーボードに対応したので、そのフレームワークに対応したということですね。

――そのときにフリック入力とポケベル入力をできるようにしたと。2009年の7月からVer.3に突入です。ものすごく頻繁にバージョンがあがっているなと感心するのですが。

足立:ああ、それはAndroidに振り回されただけです(笑)

――やっぱりAndroid 1.5から1.6の間がつらかったのでしょうか?

足立:そうですね、OpenWnnが出た時が作業量としては大きかったですね。もともとSimeji Ver.1ではSocial IMEを使っていたので、HTTPでアクセスしてアプリ側にデータを持っていくという簡単な構造でした。でもOpenWnnという日本語変換するエンジンが公開されて、それを取り込みたいと思ったのですが、見たらソースコードが1万行くらいあって(笑)。それを理解しないで出しちゃうととんでもないことになるので、しっかりと読んで理解しました。プラスアルファとしてフリック入力やポケベル入力といったSimejiらしい機能を実装するところがいちばん大変なところでした。全部書き直しですからね(笑)。

――Ver.1からVer.2に変わるときにはコードを捨てたのですか?

足立:捨てています。Ver.3にOpenWnnを適用して、そこからが積み上げですね。その間にちょこちょこくだらないことをたくさんしています。デザインとかもそうですけど、細かいところではSocial IMEに接続したときの変換精度を上げる仕組みを入れるとかですね。実際のところ、バージョン管理のポリシーってあまりないんです。ここからVer.2だけども、自分のやった作業量で区別しようと。あとユーザーにとってインパクトがあるだろうといところでバージョンを切っていたというところもありました。実際、アップデートの数でいうと230回くらいですね。

――ということは、1週間に1回くらいのバージョンアップですか?

足立:昔は1日2回とかありました。

――細かなバージョンアップをしたことによるユーザーの反応はどういう感じでした?

足立:テッキーなユーザーの方は喜んでくれました。いろんな端末が出てくると、ある端末では動かないという場合も出てくるのですが、それを動くようにすると喜んでくれたりとか、「こういう変な機能をつけたんですよ」と言うと面白いって言ってくれる人がいたりとか、さまざまな反応がありましたね。
 例えばフリック入力でいうと、矢印キーのところを横にスライドさせると、“()”が出たりするところとか。“()”が即入力しやすいキーボードということで、地味とか思いながらも、それで喜んでくれる人もいたりしました。

――ということは、実は搭載したら反応が悪かったという機能はありますよね?

足立:複雑になるのがすごく嫌なんですよ。使われてないんだったら切ってしまおうというのがあって。最近でいうとキャンディっていう拡張機能があまりにも使われないので、誰も気づいてくれない機能だったから切ってしまいました。自分は面白いかなと思ったけど、たまにはそういうこともあります。ずっとホームラン打てるわけじゃないんで。

――デザイナーの矢野さんから見てこの機能はいらなかったというのは……。

矢野:んふふふ、いらなかったですか……(笑)。細かい機能に関しては把握しきれてないんですよね。さっきの“()”の入力なんかも実は知らなかったりとか。

――足立さん! 衝撃の事実を聞いて、どういう気分です? 

足立:いや、僕なんか、そういうのが好きなので(笑)。テレビのリモコンのようにボタンを新しく作るのは簡単なんですよ。そうするとわかりやすくていいんですが、それでは見た目が複雑になってしまう。なんとか自然に溶け込むような形で入力できるようになると一番いいかなと思います。気付きにくくなってしまうこともありますが、「これ便利!」ってそれに気付いた人を横でちらっと覗くのが好きなんですよ。矢野さんに「すごく便利じゃん!」ってたまに言われるのですが、「でしょ?」とか言いながら喜んでいます。こういう「知らなかった」という反応はよくあります(笑)。

――2009年7月にVer.3が登場して、矢野さんが加わられたのはVer3.9からでしたっけ?

足立:実際にSimejiのアイコンがつるっとしたデザインになったのは矢野さんのおかげです。時期的には2009年7月くらいだったと思います。アイコンは元々実写のしめじだったのが、なめこのようになりました。

――プログラマーとデザイナー視点で受け入れ難い部分みたいなのはありました? これはやめてほしかったなとか。

足立:細かいところで「ここのところに違和感あります」という話はちょくちょくします。基本的にはお酒を飲みながらざっくりとしたことしか伝えないんですが、いつも自分のイメージしていたものより120%くらいいいものが返ってくるので「いいですね!」という反応になります。全体的なビジュアルデザインについてはおまかせというか、文句のつけようがないものが出てきます。

――最初、Simejiのインターフェースを矢野さんが見た第一印象はどうでした?

矢野:ソフトウェアキーボードはスマホで初めて触りましたので、やはりガラケーに比べると複雑に感じました。第一印象は「ああ、こうなっちゃうんだろうなぁ」というものでしたね。端末がいくらかっこよくなっても「こうなっちゃうんだな……」と残念に思うところはありました。ただ慣れてくると「ハード的に触れられないものは不便ではないか」と思っていたものが、「モードによってツラを変えられるのはソフトウェアキーボードの利点だな」と思い始めるようになりました。最初は便利なことに対して面白くなかったので、それに対してオブジェクションがない状態でしたね。ただアイコンが荒々しいのを修正したり、できることからやっていったので、見かけの熟考がなされてないデザインに対して疑問はあまりなかったです。

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