このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

なぜバイドゥはSimejiを買ったのか? 開発者から真実を聞く

2012年05月17日 12時00分更新

文● 美和 正臣、写真● 小林 伸

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

感情的に“嫌い”を前面に押し出して――
落書きでできあがったマシケくん

――ところでさっきから気になっているのですが、このパンダは一体なんなんだと……。

足立:ああ、豚まんです(笑)。パンダのマシケくんです。とりあえず社内用に作ってみたんです。

――Webでも連載されているマシケくんですが、このキャラが生まれたところから教えてください。

矢野:何ででしたっけー(笑)。こじつけますと、まずSimejiが中国の企業に買われて、非常にネガティブな意見もあったわけですよ。ロジカルでなくて感情的な意見で「中国は嫌!」って意見が。そこで「中国って面白いねって思ってもらうにはどうすればいいかしら?」と考えました。頭の中で閃いたのが、Simejiが中国企業に買われたってことを薄めるのではなく、逆に前に出していこうということでした。「中国といったらパンダだよね!」みたいな感じで、Simejiのコミュニケーションデザインの中でパンダのキャラクターをねじ込んでいこうと思いついたわけです。パンダのキャラをドーンとWebページに描いちゃえ、っていたずら描きっぽく描いて、なんかキャラとしてかわいいから思いつきで漫画を描いたんですよ。そうしたら自分でも書いてておもしろいですし、読者からも楽しかったと言われてまたうれしくなっちゃって、ずっと描いてるうちに、だんだんキャラっぽくかたまってきた――という結果ですね。だから、全然アプリと関係ないんですよ(笑)。

――これがSimejiの中で大々的にフィーチャーされることは?

矢野:スキンで。

足立:地味に。

矢野:日本語入力アプリってそんなにキャラが立つアプリではないし、これが好きだとか使いたいという形で選ばれるアプリになるって、難しいと思うんですよ。機能として使う代物であって、愛されることは結構難しい。そこに無理やり愛嬌をコミュニケーションデザインの中で加えていくとしたら、キャラがあったりとか、周りの人たちが楽しそうに開発しているよねっていうことをみなさんに知っていただくしかないなと。それの一環ですよね。

――このキャラ、いわゆる「ぶさかわいい」ですよね。

矢野:やあもう、ほんとにそうですね。すぐ怒るし、切れるし、やな奴なんですよ。場所が和歌山なのは足立さんが和歌山出身だからってのと、アドベンチャーワールドがあるから。和歌山が一番パンダが多いんですよ。

足立:パンダって聞いたときに、出身地を和歌山のアドベンチャーワールドにしてくださいとお願いしました(笑)。

矢野:中国じゃないじゃん(笑)。

足立:中国からレンタルしてるから。彼女も神戸にいることにしてくださいと(笑)。僕、神戸大学出身だったので(笑)。

マシケくんはSimejiのWebページでいたるところにフィーチャーされている。4コママンガも頻繁に更新されている

――で、このキャラクターの額に書いてある“551”ってのは何の呪文です?

矢野:これは大阪の名物で551蓬莱っていう豚まんをイメージしています。このシール作ってるときに豚まんっぽいねって話になって、551って書くかと。

足立:最初「肉」って書こうかって話になったんですけどね。「焼印みたいに!」ってお願いしたのですが、技術上の問題でできませんでした。

行き着く先は“オモシロイ”がキーワード

――今後の話を聞かせください。Simejiはどういうふうになっていくんでしょうか。なぜかというと、IMEの入力方法やデザインのところって来るところまで来ちゃったのかなと感じるわけです。あとは革新的なことをやるしかない。そう考えると開発の最前線にいる人はどういうふうに考えているだろうと不思議に思っていたんです。

つい最近ではIMEのクラウド入力対応を発表した。最新のテクノロジーを取り入れ、Simejiは日々進化している

足立:うーん難しい。

矢野:面白い方向に行くんじゃないのかな?

足立:それしかできないしね。

矢野:便利さっていうのは積み重ねなので。ユーザーのみなさんを馴らしていかないといけないからガラッと変えるってことはおそらくないと思います。だけどユーザーはもっと広がりが出てくるはずですよね。まだスマホを使ってない女性ユーザーも多いので、“面白い”っていうのが使う理由にすることはきっとできると思います。面白いなと思っていただく方向に行くかなと。

――たとえばカーソルにマシケくんが出てくるとか、入力しすぎると過労死してしまうとかそういうのはどうです(笑)。

矢野:極端な話、そうですよ。

足立:そんなアイデアありましたよね。マシケくんじゃなかったですけど、エフェクトついたら面白いとか(笑)。

矢野:音を鳴らそうとかね。三線の音を鳴らして、入力しながら沖縄民謡が奏でられるとか。

足立:入力の音はカチカチって音と、タイプライターの音の2種類の音を選べるんです。これに加えてバリエーションがあったら面白いんじゃないかと思った時期がありました。僕、“ジョジョ”が好きなんで「オラオラオラ」ってすごいスピードで何十回か間違えずに入力できたら「オラァ!」ってスマホから聞こえてきたらこれは面白いなとか(笑)。ゲーム業界の方に「こういうサウンドって簡単に使えるの?」って聞いたら「う〜ん」と言われて。そんなに入れたいのだったら自分で「オラ」って言えばいいんじゃないの、って言われたんですけど、そういうもんじゃないんだよなぁ。ファンとしてはゲームで使われているオラがいい。ああ、ダメか、と今はあきらめてるんですけど。
 ただ、絶対ブレてはいけないのは、ツールなので、成し遂げたいものについては最短で実行できるようにする。プラス、使う最初の動機として「オラ」を押したいよねとか、マシケくんが出てきて踊ってくれるとか、そういうところはあると思うんです。シンプルさというのも最初の使いやすさにつながってくると思うので、そういうところもSimejiにぶらさげていきたいなと思っています。

――なるほど、ありがとうございました。これからもがんばっておもしろいものをお願いします。

【関連サイト】

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン