このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

最新スマホが次々登場 Mobile World Congress 2012レポート 第22回

モバイルは10年前のデスクトップ、Webは必ず勝つ

Mozillaがスマホ用OS「B2G」に乗り出す理由を聞いた

2012年03月28日 12時00分更新

文● 末岡洋子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ウェブブラウザーのFirefoxでおなじみのMozillaが、ウェブベースのモバイルOSプロジェクト「Boot to Gecko(B2G)」を進めている。2月末に開催された「Mobile World Congress 2012」で、MozillaはB2Gを正式発表し、アプリケーションストア「Mozilla Marketplace」も発表した。すでにスペインのTelefonica、ドイツのDeutsche Telekomとも提携し、B2Gベースの端末開発を進めているという。

 MWCで開発ディレクター、Johnathan Nightingale氏にB2Gの狙いについて話を聞く機会があったので紹介しよう。

Androidスマートフォンに必ずしも満足していない
携帯キャリアを巻き込んで立ち上げる

MozillaのJonathan Nightingale氏。最終日だったため、ガラガラの声でインタビューに応じてくれた

――B2Gが発表されました。Telefonicaとの提携も発表し、年内にも端末が登場とのことですが、MozillaがB2Gを開発した理由を教えてください。

 現在のモバイルの状況は10年前のデスクトップの状況に似ています。当時の我々はWindows PC、Macを買い、その上で動くネイティブソフトウェアを買っていました。OSを移行するときはこれらソフトウェアをすべて買いなおす必要があり、不満を抱くユーザーはたくさんいました。その後にイノベーションはウェブに移りました。ウェブには相互運用性、移植性などの特徴があるからです。Windows、Mac、Linuxにはすべてブラウザーがあり、ウェブ上に新しいサービスを構築すればすべてのユーザーにリーチできるわけです。

 ところが、スマートフォンが登場し、また10年前に戻ってしまいました。iPhoneで購入し、インストールしたアプリは、Androidに移行するとすべて買いなおし、入れなおしになります。このような状況に対し、一部ユーザーは再び不満を感じています。

 iOSやAndroidで動くアプリの多くが、HTMLベースになりつつあります。それをWebKitでラップしてiOSのApp Storeで提供したり、ADKでラップしてAndroidマーケットで提供しています。だが、その必要が本当にあるのか、Android、iOS、Windows Phoneなど、ハードウェアとアプリを分離する中間層を除くとどうなるか。

 ここからスタートしたのがB2Gです。B2GはFirefoxのレンダリングエンジンであるGeckoを土台とします。新しくOSを開発したというより、ウェブをこれまで普及していなかった分野に拡大するといえます。その意味でGeckoではなくてもよいのです。本当に目指すのは“Boot to Web”なのです。

MWCの会場ではGALAXY S IIにインストールしたデモ機が用意されていた

 5年前にウェブベースのOSを作成できなかった理由は、携帯電話で必要となる通話、テキストメッセージ、カメラへのアクセスといった機能がなかったからです。Mozillaはこれらの機能にアクセスするためのAPIを構築し、W3Cなどの標準化団体に提出しました。この結果、ネイティブアプリは不要になります。B2G端末にはネイティブアプリは存在しません。またウェブベースですが、ウェブサイトを見るのとは異なりオフラインでも利用できます。

 ウェブはiOSやAndroidよりも古く、革新的なサービスを構築する土台として独占的な立場を占めています。Mozillaの最大の狙いはウェブの成功です。

――過去にオープンソースのモバイルOSプロジェクトがいくつかありましたが、成功したとは言いがたい状況です。

 B2Gに対するオペレーターやメーカーの関心は高く、ウェブベースなのでカスタマイズが容易であること、GoogleやAppleによるユーザーの囲い込みの懸念もないことなどが評価されているようです。実際Telefonicaが作成した試作機は、B2Gとは違うルック&フィールになっています。

 オペレーターの中には、スマホブームに乗るためにAndroidでラインナップをそろえる一方で、自分たちのコントロールを失ってしまうAndroidに憎しみを抱いているという“愛憎の関係”にあるようです。

 かといって、ウェブベースのOSを作るだけでは(成功は)難しい。そこで我々はB2Gと同時にアプリストアの「Mozilla Marketplace」を立ち上げます。現在ユーザーはプラットフォームとアプリストアにメリットを感じています。Mozilla Marketplaceの目的は、どこでも動くHTML5の威力を感じてもらうことです。Mozilla Marketplaceで購入したアプリは、デバイスやOSではなく、ユーザーのIDに結びついています。B2Gではなくても、Windowsデスクトップでも、Android端末でも、ウェブブラウザーがあるところならどこでも動きます。

 ここでわれわれは、Firefoxのアドオンマーケットでやってきたノウハウを生かします。Mozilla Marketplaceでも、B2Gと同様にコントロールするつもりはありません。我々が管理するのはアプリの提出、レビュー、アプリリストのキュレーションで、マーケットプレイスが構築されている技術や標準はすべて公開します。これを利用して、外部の人もアプリストアを構築できます。

 現実の世界で我々はさまざまなショップの中から商品やサービスを選んでいます。オンラインでもこのモデルは機能するはずです。

 iOSやAndroidでは、収入のためにシステムをコントロールする必要がありますが、我々にはその必要はありません。課金の方法を提供しますが、ユーザーとアプリの間に入るつもりはありません。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン