最新スマホが次々登場　Mobile World Congress 2012レポート 第22回

モバイルは10年前のデスクトップ、Webは必ず勝つ

Mozillaがスマホ用OS「B2G」に乗り出す理由を聞いた

ユーザーの選択の自由を抵抗する革命

――Mozilla Marketplaceのオープンはいつ頃の予定ですか？有料アプリの売り上げ共有比率は？

　MWC会期中に、Mozilla Marketplaceで公開するアプリの受付を開始しました。2012年後半に一般ユーザー向けにベータ版の提供を開始し、その後一般公開となります。売り上げ共有比率などについてはまだ決まっていません。

――iOSやAndroidは端末が魅力的で、ユーザーはそれと引き換えに、アプリに関する悪条件を飲んでいるようにみえます。自分たちの自由よりもiPhoneやAndroid端末を所有する、使用することの価値が勝っているように見えます。

　以前のウェブブラウザーはIE（Microsoftの「Internet Explorer」）が独占しており、選択の自由を主張する人は少なかった。Mozillaは代替をつくり、ウェブブラウザーへの関心を高めました。我々はMicrosoftのIEチームと比べるとはるかに小規模ですが、対抗できました。ユーザーに楽しさと自由を提供して革命を起こしたからです。今度はモバイルでこの革命を再現します。

　重ねますが、我々の狙いは独占ではありません。選択肢があることが大切で、競合と標準を推進することが望みです。選択の土台となる技術がオープンで、相互運用性があるべきだと考えています。

――ゼロから始めるにあたって、市場である程度のシェアを獲得するために何が必要と考えますか？　市場にどうやってアピールする戦略ですか？

　成功に必要となるのは、HTML5が普及／浸透することです。2年前ならアプリ構築技術としてのHTML5に対する懐疑論は根強かったのですが、このところHTML5に対する態度が変わりつつあります。

HTML5ベースであれば、PCとモバイルで同じアプリが動く理屈だ

　モバイルはデスクトップとは異なり、6年前にMozillaがFirefoxで展開したクチコミ戦略がそのまま応用できるとは考えていません。B2Gでは、キャリアや端末メーカーとの関係が重要になります。たしかにユーザーは現在自由をあまり気にしていません。

　そこでオペレーターや端末メーカーにB2Gの価値をみせて、加わってもらうことです。B2Gの価値とは、オープンなウェブ、キャリアや端末メーカーが体験をカスタマイズできるという自由、HTML5アプリでおきているイノベーション、そしてユーザーが端末を乗り換えてもアプリが使えることです。

　革命はウェブで産まれており、Mozilla Marketplaceには面白いアプリがあり、端末を乗り換えても使えるとユーザーが気がつき始める――デスクトップで起こった意識の変化がモバイルでも始まると期待しています。すでにHTML5ベースの面白いアプリはたくさんあります。アプリ自体はラップされているので、そうではないように見えますが。

――FacebookがW3Cでモバイルウェブの標準を策定する作業グループを立ち上げました。Mozillaも加わっています。MozillaやFacebookが感じているモバイルウェブの課題は何ですか？

　Facebookの真意はわからないが、言えることはFacebookはウェブが将来だと思っているようだということです。モバイルでもウェブベースの体験を提供するにあたって、基本的な要件をそろえる必要があると感じているようです。現在モバイル端末上のOSとウェブブラウザーは技術的にばらばらで、開発側は推測に基づくしかありません。

　Facebookが開始した作業グループ「Mobile Web Platform Core Community Group」は、すべてが共通してサポートする土台の要件を定義しようという動きです。これにより、開発者は開発ターゲットを固定しやすくなり、ブラウザーベンダーも自分たちのブラウザで実装／保守すべきものを固定できます。ウェブベースの相互運用性をプッシュするものなので、Mozillaは賛同します。

筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている