最新スマホが次々登場 Mobile World Congress 2012レポート 第19回
トラフィック対策やLTE動向を聞く
Ericsson CTO「スマホ時代、高性能なネットワークが重要」
2012年03月06日 19時00分更新
スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」(関連記事)ではメーカー各社が発表した最新のスマートフォンが注目を集めたが、インフラ(ネットワーク)あってのスマートフォンだ。基地局やコアネットワークなどの通信インフラを提供するEricssonは、この分野では最大手。MWCの会場で、1月に同社CTOに就任したばかりのUlf Ewaldsson氏にネットワーク側のトレンドについて話を聞いた。
ネットワークで避けて通れない標準では、世界各国ではじまるLTEサービスが重要なトピックとなる。現在LTEは米国、欧州、韓国などで始まっており、日本でも「Xi」ブランドで2010年末にスタートしたNTTドコモに続き、今年にも主要キャリアが開始すると予想されている。
インフラ側から見ると、LTEはCDMAとGSMの戦いが終わるという役割を持つ。Verizon Wireless、KDDIなどのCDMAキャリアがLTEを開始することで、世界のほとんどのキャリアがLTEに集約されていく。LTEにはFDDとTDDあるが、Ewaldsson氏によると、MWC会期中に開かれたTD-LTE推進団体が開くGTIミーティング(「LTE TDD/FDD International Summit」)で、FDDとTDDをさらに近づけることで一致した、と報告する。QualcommとHisiliconは、1つのシリコンで両モードをサポートするチップセットを発表したという。
Ericssonは自社製品でTD-LTEとFDD LTEを含むマルチ標準機器を展開する。「同じハードウェアで両モードのLTE、W-CDMAなどさまざまな通信規格に対応する」という。
高速化を図るだけでは不十分だ。2011年、4億8800万台のスマートフォンが出荷されたというが、スマートフォンブームにより、「カバーエリアがさらに重要になった」とEwaldsson氏。たとえば、屋内などこれまでカバーしていなかったところでネットワークが必要とされているという。データ通信は音声とは異なり、1つの基地局からほかの基地局に移動すると速度に支障が出る。この特性から「十分なカバーが重要になっている」と説明する。
カバーエリアと高速通信が実現する高性能なネットワークは「スマートフォン時代に重要だ」とEwaldsson氏。つながらないネットワークに対するユーザーの許容度は低く、乗り換えの原因となってしまう。
もう1つのトレンドが、IPだ。今年はLTE上での音声通話(VoLTE:Voice over LTE)の商用サービスがスタートすると予想されている。現在LTEで音声通話をする際は、3Gに切り替えて回線交換を使うCSフォールバックという仕組みが利用されており、わずかではあるが時差が伴うなどのデメリットがある。「オールIPになると、音声はIPサービスの1つになる」とEwaldsson氏。動画や写真などのマルチメディアを付加できるようになり、「HDボイス、ファイル共有、プレゼンスなど音声通話がリッチになる」と語った。
だが、LTEのカバーエリアの問題から、ほとんどのオペレーターにとって音声をすべてVoLTEで提供することは、現時点では難しい。そこでEricssonは3Gに移動してもシームレスに通話を続けるためのSRVCCという技術も開発している。
Ewaldsson氏がもう1つ強調したのが、トラフィック急増対策だ。NTTドコモの大規模な通信障害を示唆しながら、「日本でコアネットワークの安定性について議論されているが、これはとても重要なことだ」とコメントした。世界的にもこの問題に対するオペレーターの関心が高まっているという。
Ericssonでは今後10年でトラフィックは10倍に膨れると見込んでおり、
1)LTE、高速なHSPAの導入
2)モジュレーションやレシーバー技術の改善
3)小型基地局を組み合わせる高密度化
などの方法を提案していくという。

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