CEATEC 2011の三菱電機ブースでは、いかにもCEATECらしいソリューションや技術展示が多数披露されているが、その中に専門家でなくてもわかりやすく興味深い展示として、同社とJR東日本が共同で実施しているスマートフォン向け情報サービスの実験「山手線トレインネット」の展示がある。
山手線トレインネットは、CEATEC開催と同日の10月4日から実際の運行車両を使って実験中のサービスなのだが、実験に使われている車両が1編成しかないので、「試してみたい」と思っても、なかなかその車両に乗る機会がないという問題がある(トレインネットのウェブサイトで実験車両の位置情報を確認できる)。そんなレアなサービスを、幕張メッセで体験できるというわけだ。
山手線トレインネットとは、無線LANを使った車両内情報提供サービスで、現在はiPhone/Androidスマートフォン向けに提供されている。車両内に無線LANアクセスポイントを多数設置して、スマートフォンの専用アプリにさまざまな情報を提供する無料のサービスだ。10月4日から11月2日までの1ヵ月間程度、実験が行なわれる予定である。
専用アプリで閲覧できる情報は、車内の状況や駅・路線情報、首都圏各線の運行情報といった鉄道情報と、駅周辺のショップ情報や山手線車両内で上映されている映像サービス「トレインチャンネル」と連動した動画、さらにはコミックや動画といったエンタメ系コンテンツなどとなる。現在は実験サービスなので、動画等は車両内のシステムに保存されたものに限定されるが、技術的には車両外の配信サーバーと接続して、随時更新することも可能という。
車両内ディスプレーで表示されている「トレインチャンネル」と連動した機能では、上映されているCMのフルバージョン動画が見られたり、上映されているコンテンツ(豆知識など)から任意の物を選んで見るという機能が提供される。
鉄道車内の無線LAN接続の情報サービスと聞けば、新幹線「のぞみ」や成田エキスプレスで提供されているような「無線LAN接続サービス」を思い浮かべる。しかし、山手線トレインネットはあくまで車両内のみに限定されており、インターネット接続には利用できない。
また接続には、車内の無線LANアクセスポイントをユーザー自身が登録して接続するという手間もある。無線LAN接続中に、バックグラウンドで動いているほかのアプリが「インターネットにつながった」と思い込んでアクセスにいき、情報が得られずタイムアウトになるという問題もあるだろう。
三菱電機の説明員の方によると、山手線トレインネットの設備を外部のインターネット接続につなぐことは技術的には可能だが、どういうサービスを提供するかはJR東日本側次第とのこと。無料で使い放題のインターネット接続を提供するというのは、さすがにコストに見合わないと思うが、なんらかの形で提供されると携帯電話のデータオフロードにもつながりそうだ。
山手線のみならず、JRや私鉄各線の主要路線にも導入を期待したい。

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