ヤフーは、新たな電子書籍サービス「Yahoo!ブックストア」を2011年中に開始すると発表した。
これは、CEATEC JAPAN 2011で開催された「Yahoo! JAPAN Day」において、「Yahoo! JAPANが新たに展開する電子書籍サービス」をテーマに行なわれたセッションで明らかにしたもの。コミック中心の「Yahoo!コミック」を発展的にリニューアルし、総合電子書籍書店を目指すという。
デバイス/サービスともオープン
出版社や著者が主体のビジネス環境を作る
ヤフー R&D統括本部フロントエンド開発2本部開発1部 高田正行部長は、「Yahoo!ブックストアは、使用できるデバイス/サービスともオープンであり、ヤフーが得意とする検索の強みを生かせるものにする。さらに、自分が買った本を起点にしたソーシャル連携により、感動を深め、多くの人ともつながることができるサービスになる」と説明。
さらに、「出版社や著者が主体のビジネス環境を作る。販売価格や期間を自由に設定し、課金のみならず、ヤフーが得意とする広告モデルも選択でき、これらを通じて利益を著作権者に還元したい。国内だけでなく、海外にも同じプラットフォームで提供できる環境を提供したい」などとした。
今年3月からEPUBを採用、
商用運用実績はナンバーワン
新たなサービス開始にあわせて、EPUBの活用を積極化。「ヤフーでは、今年3月からEPUBを採用。震災時には、週刊少年ジャンプのサイマル配信を行なっているほか、すでに600冊以上を有料配信しており、商用運用実績はナンバーワンとなっている。集中アクセスへの対応や有料配信のノウハウ、オーサリングや拡張書式の提案といった出版社向けの提案実績を生かして、EPUB配信のコンサルティングパートナーとしての役割を果たしたい」などとした。
また、電子書籍市場で83%の取り扱い高を占めるコミック分野での優位性と、過去8年間に渡るYahoo!コミックの実績を背景に人気コンテンツを提供。ヤフーが持つエンターテイメントサービスの活用といった多メディア展開を通じた作品の露出度向上を図ることでの売り上げ拡大にも寄与できるという。
すでに原作書籍と連動させる形で、ゲーム化、映像化したビジネスの展開例をあげながら、「原作本の販売増だけでなく、集客、映像化、ゲーム化、グッズ販売、電子化などのサービスを束ねて提供することも可能になる」とし、ヤフーならではの展開を強調した。
複数端末での閲覧、ポイントキャンペーン、
プレミアム会員向け特典を展開
Yahoo!ニュースやX BRANDでの約7000万のユーザー、GyaO!の約1500万ユーザー、Yahoo!モバゲーの約500万ユーザーも、出版社の電子書籍事業の拡大に活用できるという。
「単純な電子書籍カテゴリーサービスに閉じるのではなく、出版から連動するあらゆるコンテンツを切り口に、多面的な展開を進めていく。プッシュ型の提案が可能になるのはヤフーならではの特色」と位置づけた。
さらに、Yahoo! JAPAN IDにより、複数端末での閲覧を可能にしたり、豊富な割引プランやポイントキャンペーン、プレミアム会員向け特典などを提供。買い切り型となるダウンロード販売、レンタル型となるストリーミング配信などのほか、月額課金方式の導入やパック商品の提供など、様々な販売プランを用意できるという。
「まずは約300万人のYahoo!コミックの利用者を、そのままYahoo!ブックストアに移行できる。さらにはYahoo!ボックスと連動したクラウド書庫サービスも提供したい」という。
2012年1月には縦書き対応
3月にSNS連携、EPUBによる複雑な組版をサポート
Yahoo!ブックストアは、年内にサービスを開始して以降、2012年1月には縦書き対応、IDや決済、検索における他社のショッピングモールなどとの連携を実施。3月にはソーシャルメディア連携や、EPUBによる複雑な組版への対応、4月以降にはクラウド書庫サービスを開始するという。
またヤフー内では、「ブラウザー配信」、「ビューワー配信」、「アプリケーション展開」などを、“電子出版"の一種として電子書籍と横並びで捉えていることを説明。「その点では、Yahoo!ニュースや、ハイクラス雑誌を出版社横断で提供するX BRANDとしてのサービスも電子出版のひとつ。まずは、無料で読めるこれらのサービスを利用してもらい、デジタルで購入できるYahoo!コミック(Yahoo!ブックストア)で購入してもらい、さらにはYahoo!ショッピングやYahoo!オークションにつなげるといった広がりを提案していく」などとした。
さらに、高田部長は、「電子書籍元年とは言われるが、ビジネスでの成功事例は少ない。だが、Androidの普及によってスマートフォン市場が拡大しており、来年春には2000万台のスマートフォン市場が形成されることになる。2000万台の普及規模が、市場が成立するひとつのラインになるとみており、いよいよスケールメリットが出てくるタイミングに入ってくる。また、日本の電子書籍市場は、北米とは異なる市場であり、ヤフーは、日本型コンテンツの創造サイクルを応援していきたい」とした。

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