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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第75回

ThinkPad X1開発者インタビュー

開発陣に聞く ThinkPad X1が「ThinkPad」である理由

2011年09月08日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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通常電圧版CPUにこだわるのは
「長く使ってもらいたいから」

 X1でレノボが譲れなかった点のひとつに、「通常電圧版CPUの採用」がある。X1をフラグシップと位置付けるレノボにとって、パフォーマンス面での妥協はできない。しかし、X1のような薄型の製品に通常電圧版CPUを採用することは、そのまま「放熱との戦い」を意味する。

土居「ThinkPad全体で見ても、ULV・LVのCPUを採用しているのは「ThinkPad Edge E220s」や「ThinkPad X121e」くらいです。基本的にThinkPadでは、かなえられる限りパフォーマンスを求めます。企業でご採用いただき、長くお使いいただいても陳腐化しないためにです。そのことは、購入された企業にとってコストメリットになって返ってきます」

X1のスケルトンモデルに見る内部(左)と、マザーボード周辺。薄型化だけでなく静音性も重視して、ファンの回転数をスムーズに切り替えている

田保「薄くなると、当然放熱の問題が出ます。最初から標準電圧で作れる、という確信はありませんでした。開発からするとチャレンジであったのは事実です」

「我々が考えたのは、単に冷やすということではなく、この厚さですら『無理に冷やさない』こと。ターボ・ブーストモードでもなければ、強く冷やす必要がないようにする、という点です。ですから単にCPUを採用するだけでなく、一段上のレベルまでをサポートしよう、と考えたわけです」

「そのために、サーマルモジュールも一から開発し直しました。ファンのブレード形状から枚数まで、シミュレーションを繰り返してチューニングを施しています」

「羽根を設計する上で重要なのは、『いかに効率良く空気を流すか』ということです。ボディーを薄型化するために羽根を薄く小さくすると、空気の流れは悪くなります。そこで風量は増えるよう工夫しています」

羽根を設計する上で重要なのは「いかに効率良く空気を流すか」(田保氏)

「もうひとつ重要なのが、回転のロジックです。回転数の切り替えをスムーズにするように、アルゴリズムにも工夫しています。冷やす際には、『ある程度発熱したら回転数を上げる』となりますが、ファンの回転数を上げると熱は比較的すぐ下がります。だからといって、すぐに回転数を下げてしまうと、実際にはファンの回転数が上がったり下がったりを繰り返してしまう。これは、単にファンの回転数が上がるよりも、音として耳障りなものになります」

「ですからレノボでは、頻繁に回転数をコントロールすることによって、ファンの音が気にならないようにしているのです。ファンの回転数が何段階に分かれているかは非公開ですが、一桁の数ですが段数はけっこうありますね」

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