読者のことを知ろうとする超地道な努力
―― デリケートな題材に関するエントリーを読んでいくと、キャッチーさに加え、断言する際に相当慎重に言い回しを工夫している印象を受けます。具体的にはどんな点に気を遣っていますか?
アサイ 僕と考えを異にする人に向けた記事を書く際は、まずそういう人たちがどういう経緯で現在の考えに至ったのか知るべきと考えています。それで僕はよくツイッター内検索を使いますね。
たとえば、先日アップした「椿の奇形と不安の種と」という、放射能がらみの風説に関するエントリーの場合、「放射能」「椿」みたいなキーワードで検索して、放射能によって椿が奇形化したと考えている人たちを見つけます。その人たちのタイムラインを読んでいって、情報を得るにあたってのバックグラウンドを探っていくんですよ。子供の健康に関する情報はとりあえず信じる傾向にあるとか、学者の言なら信じるっぽいとか、なんとなく見えてくるものがあります。
それを把握したうえで、その人たちの論拠を真っ向から否定するような言い回しを避けて、下手な刺激をしないように心がけています。
―― 地道ですね~。「熊森問題」でも色々な反応を許諾つきで載せたりして、すごく真面目に論じていますが、「分かってくれる奴だけ読んでくれればいいや」とはなりません?
アサイ いえ、まだ自分のブログがあんまり筋の通ったものじゃないという意識がすごくあって、何とかましな方向にいきたいという感じでして……。
僕はネットで職業を伏せてハンドルネームを使っているんですけど、その状態でも責任を伴った発言をすべきで、顔を出すことが説得力を増すひとつの材料になり得るかなと思っています。だから、現実社会と同程度に、やれることはできる限りやりたいなと思っています。
―― プロフィールで「会社バレを恐れています」と書かれていますが、顔出しは大丈夫なんですか。
アサイ そうなんですよね、全然リスクの管理がなっていないです(笑)。ただ、実名と職業以外は公開するのが、僕の中のひとつのラインになっているんです。顔は表に出さないと、「森ガール」的なエントリーの面白さもかなり減ってしまいますし、何か伝えるにも説得力が落ちてしまうのかなというところがあります。
―― 逆に、本名と職業を明かさないことで、発言に余計な色を付けずに済むみたいな効果もありそうですね。
アサイ それも大きいんですよ。「ああいう仕事をやっているから、こう書いているんだ」みたいなところで情報が評価されるより、「ネットで活動しているアサイって奴が、こう書いている」というところで判断してもらうほうが誠実だと思いますし。
この連載の記事
-
最終回
トピックス
アンサイクロペディア“中の人”が語る、ユーモアの難しさ -
第99回
トピックス
マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」 -
第97回
トピックス
死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」 -
第96回
トピックス
NTT研究者が“錯覚”サイトにかける純粋な感情 -
第95回
トピックス
ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ -
第94回
トピックス
諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ! -
第93回
トピックス
探検コムの「広く浅く」が深すぎる! -
第92回
トピックス
金髪ギャル語でニュートリノ、Shoさまが熱い! -
第91回
トピックス
「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る -
第90回
トピックス
電子書籍を紙で売る! 「コトリコ」挑戦への道 - この連載の一覧へ