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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第98回

「もし森ガールが森へ入ったら」アサイさんの超地道な努力

2011年08月31日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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内面を整理する「自分のための場」に、外向け仕様も追加

―― まずは「紺色のひと」をはじめたきっかけから教えてください。

アサイ 2005年の秋頃、もともと詩や小説を書くサイトをやっていまして、その日記パートとしてはじめました。もともと昔から思っていることを書き留めて整理するという……日記というより私的なものをメモ帳に残すみたいなことをやっていたので、その延長線上という感じで。もとのサイトはもう休止しましたけどね。

アサイ氏。子供の頃から紀行文などを好み、日々の書き留めもその頃によく読んだ作家の雰囲気を帯びていたと振り返る

―― そうしたテイストが2010年春頃から少し変わってきましたね。様々な情報を引用して、長文で情報を発信するような記事が増えた印象があります。

アサイ けっこう意識的に変えていきました。僕にとってブログは「自分のための場」という基本スタンスがあるんですけど、はじめは自分の内面を整理する意識でした。それがその頃から、自分の考えを外部に伝える意識を持ったエントリーも発表するようになっていったんです。

 きっかけは2010年3月、「佐渡島のトキ保護施設に野生のテンが入ってきて、トキ9羽を殺した」というニュースです。僕はもともと生物が好きなので、こういう生き物にまつわる取り組みや事故などに関して考えさせられる話題を積極的に読者に紹介したり、自分なりの考察を伝えたりしようと思ったんですよね。

ブログの転換点となった、「トキの襲撃事故からみる外来生物問題~その1.なぜトキを殖やすのか」(2010年3月19日)。トキの絶滅に関する誤解や、外来種のテンが佐渡島で繁殖したいきさつなどを分かりやすく解説し、種の保存の観念について冷静な考察を残している

―― その流れから、世間一般に広がる誤解……現在の放射能パニックの風説を含めた、ニセ科学に関しても言及するようになっていきましたね。そういう意識はブログでアウトプットする前から持っていたんですか?

アサイ いえ、生物は好きでしたが、ニセ科学はほとんど知らなかったです。ネットに触れる前の高校生くらいまでは「水にありがとうと言うと、きれいな結晶ができる」くらいのネタしか知らなかったですし。

 最初に興味を持ったのは、ブログをはじめてからです。はてなダイアリーで書いていたので、自然とはてなブックマークを見るようになっていったんですよね。それが他の人の人気エントリーに触れるきっかけになり、次第に気になる記事……“ゲーム脳”や血液型性格診断みたいなものの問題点を指摘している記事を、いろいろ読むようになっていったという流れです。そこから生き物に絡んだニセ科学について積極的に調べるようになったのはここ3年ほどだと思います。

―― ねらいはどんなところにあるのでしょう。

アサイ うーん……根本にはやはり「自分のための場」という意識があるので、僕はこう考えているよ、と根拠と一緒に伝えられればいいかなと思っています。ニセ科学についても、ゲーム脳だったり血液型性格診断だったりを信じている人がいても、それを否定する気はないんですよ。でも、自分はそれを間違っていると考えているわけで、それをあまり攻撃的でない形で伝えられればいいです。「あなたのその考えは間違っている、正せ!」みたいな感じではなく、「もしかしたらちょっと変かもよ」と考えるきっかけにしてもらうような。僕自身あまり真っ向からぶつかってやりあうのが得意じゃないんですよね。

Skypeのビデオチャットでインタビューに応じてもらった

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