近年、SMB向け市場に力を入れているのが、ネットワーク機器の最大手であるシスコだ。これまではスイッチがメインだったが、2月からは米国でも実績の高いNASを日本市場でも展開している。
SMBに注力するシスコのお手軽NAS
シスコの「Cisco Small Busuness NSS 300シリーズ スマート ストレージ(以下、NSS 300シリーズ)」は、文字通りSMB向けのデスクトップ型NASだ。米国では昨年の秋から出荷を開始し、日本では2月に発売が開始された。 スモール ビジネス マーケティング マネージャの前川 充氏は「米国では、すでにSMB向けの製品展開を3年くらい前からやっており、ブランドも確立しています。この製品も3世代目くらいです」と語る。満を持して国内でも展開されるというイメージだ。
製品は2/4/6ベイの筐体が用意され、それぞれHDDレスモデル、1TB HDD搭載モデル、2TB HDD搭載モデルが提供されている。つまり、全9種類で6ベイモデルの12TBが最大搭載容量になっている。ベイの数に合わせて、対応RAIDレベルが異なり、2ベイ筐体はRAID 0/1、4ベイ筐体はRAID 0/1/5/6、RAID5+ホットスペアという構成がサポート。6ベイ筐体ではRAID6まで対応する。インターフェイスはeSATA、GbEポートがそれぞれ2つ、USBポートが5つ搭載されており、拡張性も優れている。
機能面での特徴は、やはりNASにとどまらないサーバー機能であろう。プロダクトマネージメント 平野晃章氏は「Webサーバーやメールサーバー、シスコ製品と組み合わせて役立つSyslogやRADIUSサーバーなども追加できます。NASというより普通のサーバーとして考えてほしいくらいです」(平野氏)という。もう1つは、容易な導入や設定。シスコ製品というと英語のメニューやマニュアルで敷居が高いイメージがあるが、どちらもきちんと日本語化されている。「『FindIT』という設定管理ツールも用意され、IPアドレス等を知らなくても、機器を自動検出し、設定メニューを呼び出せます」とアピールする。
バックアップ機能も豊富で、クライアントPCやサーバーからNASへのバックアップのほか、NAS同士のレプリケーション、NASから外付けHDDのバックアップなどをサポート。重要なデータを保護する。
パフォーマンスという観点においても、前川氏は「コンシューマ製品のように価格重視ではないので、スペック的に余裕を持っています。試験もきちんとやっていますので、安定した性能が出せます」と説明する。
価格競争の激しいこの分野に進出する理由
ネットワーク分野で高いシェアを持つシスコが、なぜ競合が多く、価格競争も激しいNASの分野にあえて進出するのか? 2ベイ搭載のHDDレスモデルが9万1500円と、決して安価なわけでもないので、バッファローのNASにいきなり勝てるとは考えにくい。
その点、前川氏は「弊社はSMB向けのスイッチやルーター、無線LAN機器などを展開していますが、これにNASを加えることで、IT機器をトータルで提供できます。サポートも一元化できますし、コストも削減できます」と述べている。製品のハードウェア保守は他社に比べても長い5年で、1年間は専門のコールセンターも使える。得意のネットワークとストレージを組み合わせることで、インフラ全体の信頼性やパフォーマンスを担保できるというメリットもある。つまり、製品に加え、ワンストップですべてを揃え、すべてサポートできるという体制も大きな売りというわけだ。これに対して、販売代理店からも確実に勝算があるという声をもらっているという。
周辺機器メーカーやアキバ系のNASキットベンダーがなかなか持ち得ないこうした販売・サポート体制は、管理者が兼任であることの多いSMBにとって大きな魅力。NASだけではなく、ITインフラ全体の最適化・コスト削減を考えるのであれば、やはりシスコ印のSMB向け製品は選択肢に入れておくべきだろう。

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