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最強のSMB向けストレージを探せ! 第10回

人気のお手軽RAIDストレージが企業向け市場へ乗り出す

人間RAIDはもう止めた!Droboで企業もお手軽ストレージ管理

2011年04月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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データロボティックスの「Drobo(ディー・ロボ)」といえば、利用中のデータを保持したまま、HDDを手軽に追加できるストレージとして人気を博している商品だ。今まで個人やSOHOのユーザーがメインだったが、いよいよ企業向け製品にも本腰を入れる

独自のBeyond RAIDでストレージ管理を楽に

 複数のHDDを束ねて、データ保護や高速化を実現するRAIDは、現在のストレージの基盤技術として数多くの製品で使われている。しかし、RAIDではデータ保護は可能だが、いくつかの課題や利用条件があるのも事実だ。たとえば、ディスクの利用量が最小容量のHDDにひきずられてしまったり、HDD交換時にディスクアレイをいったん削除しなければならなかったり、回転数やメーカーの異なるHDDでディスクアレイを構成できなかったりといった点である。特にHDDが大容量化したことで、ディスク交換後のリビルド作業に時間がかかるのも大きな問題。「RAIDは25年前のテクノロジーなので、多くの欠点や実情にあわなくなっている部分が出ています」とはデータロボティックス 日本オフィス カントリーマネージャー 藤武 琢也氏の弁だ。

データロボティックス 日本オフィス カントリーマネージャー 藤武 琢也氏

 こうしたRAIDの課題を解決すべく、データロボティックスが設立から2年かけて開発したのが、同社のDroboシリーズに搭載されている「Beyond RAID」という独自のディスクアレイ技術である。Beyond RAIDはRAID1/5/6相当のデータ保護機能を持ちながら、RAIDの使い勝手の悪さを解消する。

8ドライブ内蔵のDroboPro(左)と5ドライブ内蔵のDrobo FS

 具体的に見ていこう。Beyond RAIDを実装したSATA対応ケースであるDroboでは、「ミックス&マッチ」という機能により、回転数や容量、メーカーが異なったHDDでもディスクアレイが構築でき、容量もきちんと使い切れる。また、障害からの復旧や容量追加も、HDDを挿入すれば、自動的に拡張されるというお手軽操作だ。ホットスワップによる拡張が可能で、「仮想ホットスペア」の機能によりデータ保護をしたまま、容量を増加できるというメリットがある。さらにリビルドもディスクアレイ全体を対象にするのではなく、書き込まれた部分のみ対象とするので、短時間で完了する。

LEDの色に合わせた対応方法がフタの裏に記載されている

HDDの容量はそれぞれ異なるが、簡単に交換でき、リビルドもすぐ

 では筐体自体が壊れたらどうするのか? こちらも実は簡単で、筐体を新品に交換し、旧ディスクをそのまま挿入すれば動作する。Beyond RAIDではデータの位置等をポイントするメタデータを筐体ではなく、HDDごとに書き込んでいるためだ。こうした実装のため、書き込み速度がやや遅いという弱点が出てくるが、それでもDroboはデータ保護の要件を優先。「Droboを使ってバックアップサービスを提供している会社もあります」(藤武氏)という。

 こうしたBeyond RAIDを開発した背景について、藤武氏は「RAID自体を拡張しようとするから、いつまで経ってもRAIDの限界を超えられないんです。ハードディスクは車のタイヤと同じなので、壊れることを前提にいかに早く元の状態に戻せるかを考えるのが正しいと思います」と説明する。

データ管理に困っているのは企業でも同じ

 これまでDroboは4/5/8のドライブを搭載できる5モデルが用意されており、USBやeSATA、FireWire 800でPCから直結するいわゆるHDDケース(Drobo/Drobo S)と、ギガビットEthernetを搭載したNASキット(Drobo FS/Pro/Elite)の大きく2つが用意されていた。導入はほぼコンシューマーといわゆるクリエイティブプロフェッショナルといわれるプロシューマーがメインで、いわゆる企業での利用は少数にとどまっていた。そこで、企業のニーズを満たすビジネス向け製品として先頃リリースされたのが「Drobo Storage for Business Bシリーズ」(以下、Drobo Bシリーズ)である。

Drobo Bシリーズのラインナップと製品スペック

 Drobo Bシリーズは従来のハイエンドだった8ドライブモデル「Drobo Elite」の後継となる「B800fs」「B800i」に加え、新たに12ドライブを搭載する「B1200i」の3機種で構成されている。なかでも新製品のB1200iは3Uのラックマウント筐体を採用し、電源やファン、コントローラーまで冗長化した完全な企業向けモデルだ。SATA HDDだけではなく、SSDとSAS HDDを新たにサポートし、Data-Aware Tieringと呼ばれるストレージの階層化機能まで備える。仮想化前提のiSCSIストレージとしての利用が見込まれる。

12ドライブを搭載するDrobo B1200iの前面

B1200iの背面。コントローラーや電源、ファンまで冗長化される

 その他、Drobo Bシリーズでは複数台のDroboの管理に対応した新しいGUIツール「Drobo Dashboard」や災害対策を前提としたリアルタイムのレプリケーション機能「Drobo Sync」なども追加され、企業での利用をかなり意識して設計されている。「Drobo Syncは複雑なシンクロ機能は持っていませんが、設定も容易ですし、なによりコスト面で非常に高い投資対効果が得られます」(藤武氏)と手軽にリモートバックアップが可能になるとアピールする。

 ストレージ管理の負荷を軽減するDroboのメリットは、個人より企業でこそ発揮されると藤武氏は語る。「現状、スモールビジネスの会社でも扱うデータは非常に増えており、多くの管理者がデータ保護のためにバックアップやコピーを手動で行なっていますが、これではまるで『人間RAID』です」と、ストレージ管理にかかる負荷増大を懸念する。確かに安価なHDDを買ってきて、データをコピーしておく人は多いが、継続的なデータ保護や災害対策を考えると、これではあっという間に限界に至るだろう。その点、容量拡張や障害からの復旧をスマートに行なえるDroboのメリットは企業でこそ活きるわけだ。コストパフォーマンスという観点でも、企業向けストレージ市場にどこまで風穴を開けられるか、注目したい。

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