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山谷剛史の「中国IT小話」 第91回

中国でデスクトップPCを修理する(前編)

2011年03月07日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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パーツ売り場で「うちで修理していきなよ!」
と声をかけられる

街中の小さなパソコン修理屋(電脳維修中心)

街中の小さなパソコン修理屋(電脳維修中心)

 最初は興味本位で住宅地のPC修理を謳う店で修理をお願いしてみた。しかし、競合相手がいないのか、あまりにも高い値段をふっかけてきた。しかも普通の個人商店のような広さで、あるのはドライバーとPCパーツが何個か。「これは(クオリティ的に)まずいかも」と思い、そこでは修理をせずに、都市の比較的中心部に位置する電脳街に向かった。

パーツ代理店が密集する電脳ビルパーツフロア

パーツ代理店が密集する電脳ビルパーツフロア

 電脳街のランドマーク的ショップに入る。目指すPC修理屋が集まるフロアは最上階。タワー型PCを抱え、1階の華やかなノートPC売り場を抜け、2階のやや華やかなデジカメやガジェット売り場を抜け、3階のパーツ売り場をさらに抜けようとすると「修理かい? うちで修理していきなよ!」とさまざまな店舗から声がかかる。声をかけてくるのは、修理屋ではなくマザーボードやビデオカードなどを扱うごく普通のPCパーツショップなのだ。

 電脳街のPCパーツショップは、実のところ各店が各パーツメーカーなり、液晶モニターメーカーなりの代理店である。Gigabyteの代理店はGigabyteの製品しか売っていないし、BenQの代理店ではモニターなどBenQ製品しか販売していない。

 しかも、パーツメーカーの代理店と言えど、「ビデオカードを扱う代理店」と「マザーボードを扱う代理店」は別である。主要中国メーカーもかなりの数があり、かつASUSやGigabyteなどの台湾メーカーもあるので、結果的にパーツフロアはものすごい数のショップが密集する。

パーツ屋には1社1ジャンルの製品しかないことも多いが、そうしたところでショップブランドPCの商談をする

 各ショップは1メーカーの1ジャンルの商品しか扱わないが、一方で1メーカーの代理店は“ショップブランドPCを作り上げるサービス”が柱となっている。それぞれの代理店が周辺の他店(他メーカーの代理店)と組んで、PCを作り上げるのだ。

 各パーツショップで希望のスペックを伝え、パーツをひと通り買うと無料で組み立ててくれる。同じ道理で、パーツを買えば部品をショップ側で交換してくれるわけだ。筆者の場合はマザーボード交換だが、たとえば「音がうるさい」からとファンを購入するだけでも、ショップ店員はそれを交換してくれる。

 なるほど、電脳街周辺では必ずと言っていいほど箱に包まれていないタワー型PCを抱えて歩く人を見かけるが、彼らは修理のために遠路はるばるマイPCを運んでいたのである。

PCを持ち込んで何のパーツと交換するか悩む人

PCを持ち込んで何のパーツと交換するか悩む人

中古パーツを使って安く修理をアピールする店も

中古パーツを使って安く修理をアピールする店も

 パーツ屋が修理すると、修理屋の立場がなくなりそうだが、電脳街の修理屋はデスクトップPCはもとより、ノートPCやPC用モニターの液晶パネルの交換、ノートPCのバッテリー交換、各ボードの半田づけによる修理や、本体のへこみの直し、「開けるな危険!」のCRTモニターの電源交換など、よろずの修理を行なっているので、棲み分けはできているのだ。

 また、過去に「権威失墜する中国のアキバ」という記事でも書いたが、電脳街は最も「淘宝網」(TAOBAO)などのオンラインショッピングの攻勢を受けている。

 パーツ屋はデスクトップPCの修理屋(アップグレード屋)を兼ね、オンラインショッピングを普段利用している客も「難しそう」「面倒」を理由に修理屋に走り、店舗と客の間でなんとかWin-Winの関係になっているのが現状のようだ。

タワー型PCを電脳街で運ぶ人

 そんなわけで、デスクトップPCの修理で電脳街にやってきた筆者だが、結局電脳街で修理をすることはなかった。その理由と顛末については次回お伝えする。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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