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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第88回

「林雄司さんっぽい面白さ」がキープできる理由

2011年02月15日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「自分の名前を出さないと手を抜いちゃう」

―― 個人管理人として「Webやぎの目」は自分100%で運営していると思いますが、2002年から勤務先のニフティでDPZを手がけるようになりました。それまでは公私を分けていたと思うんですが、それがリンクしたのはいつ頃からですか?

 DPZを始めるときですね。けっこう意識的にリンクさせました。それまで会社では旅行サイトを作ったりしていたんですが、そのときに上手くいかないなーと感じていたんですよ。……うーん。やっぱり、自分の名前が出ないと手を抜いちゃうんですよね。どうせ自分名義じゃないから、適当に「絶対オススメでーす」「これは要チェック!」みたいなことを書いたりして(笑)。

 でも、個人名義だったら、「なぜお薦めか」というのをかみ砕いて考えて、もっと手垢の付いていない言葉を使おうみたいな意識が働くんですよ。それでもっと真面目に仕事するためには、僕の場合は自分を100%出していくしかないなと思ったんです。じゃないと手を抜いちゃう(笑)。

DPZの前進となったニフティの単発企画「夏休みの自由研究2002」(2002年7月~9月に更新)。この企画に取り組んだ時点で、個人サイト管理人の顔とニフティ社員の顔が完全に融合したという

―― (笑)。最大公約数に向けた広く浅くの方向ではなく、ニッチといいますか、林さん個人が深く刺さるものを紹介するという。

 意外にそんな狭いところ狙っている気はあんまりないんですよ。名前を出すとお薦めするにも理由をはっきり書くようになるわけですが、僕の場合は自分視点だと世間の流行に合わせたものは書かなくなるかなあと。たとえば世間でゆるキャラが流行っていますけど、それをプッシュするよりも「むしろこっちのほうがいいよ」みたいな視点になるんですね。

 ゆるキャラが良くないというわけでなく、流行や季節柄みたいなものに左右されず、自分の中にある明確な基準で「コレがいいですよ」と書いていけるから、一人称のほうが責任を持って薦められるという感じですかね。それをニッチに向けてではなく、幅広い人たちに向けて書いているという意識です。

―― 企画立案の時点では自分の内側を見て、アウトプットのときに世間を見る感じですかね。うーん、たとえば「僕は夏でも焼き芋が好きだ」みたいなことを、誰でも楽しめるように書くという。

 うん。そう、そういう感じですね(笑)。多分DPZの作りがそうなっていて、読者アンケートで上位の物事を取り上げるんじゃなく、書き手が「とにかくコレがいい」というものを親切に説明する。遠いところから歩み寄ってくる感じがDPZのカラーだと思います。

 以前(この連載で)取りあげてもらった大山さんや乙幡さんたちも、素っ頓狂な題材を持ってきて、それを丁寧にプレゼンしてくれる。そういうところがすごくDPZ的だなぁと思うんですよね。たぶんDPZのライターは、自分の中に軸があって好きなモノを見つけてくる能力と、それを分かりやすく説明する能力がある人なのかなと。

―― なるほど。それで、法人内でチームでやっているサイトながら、個人サイト的な雰囲気が保たれているわけですね。でも、社内で制約みたいなものはありませんでしたか? DPZだけでなく、個人サイト管理人として本名を出すなみたいな。

 あー、僕の耳には聞こえて来なかったですね。「Webやぎの目」の活動なんかは、裏で何か言われたということもあとで聞いたりしましたが、直接ではありませんし。ありがたいことに、自分が遠慮なく出せる環境は整っていますね。

DPZは常時ライターを募集しており、定期的にメールが届くという。その採用率(競争率)は5倍くらいとのことだ。「やっぱり一緒に仕事することになるのは、世間じゃなくて自分を軸に企画が立てられる人ですね」と語る

(次のページに続きます)

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