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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第88回

「林雄司さんっぽい面白さ」がキープできる理由

2011年02月15日 12時00分更新

文● 古田雄介

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「友達がいなくてもサイトなら作れた」

―― まずは経歴を追いながら、林さんの表現活動について教えてください。ネットでの活動は1996年スタートの「Webやぎの目」が最初とのことですが、当時はすでに社会人になられていましたよね。学生時代はどんな活動していたんでしょう。まだインターネットは一般的ではなかったでしょうから、ミニコミ誌やパソコン通信などですか?

 大学時代は特に何もせず、鬱々としていましたね。友達いませんでしたから(笑)。何かを表現するという意味では、むしろ高校時代ですか。映画を作ったりマンガを描いて応募したりという活動をしていました。

 ミニコミだと印刷が面倒くさかったり、友達を集めたりしなきゃいけなかったりするじゃないですか。そういう社会性がなかったんですよね。パソコン通信にも興味はありませんでした。そんな感じで大学を卒業して、パソコン通信で企業情報や新聞記事などを売る会社に就職したんですが、そこの研修で初めてやったくらいですから。

林雄司氏。「Webやぎの目」を運営していた当初は、「会社でも友達がいませんでした」と笑う

―― そこからインターネットで個人サイトを作ろうと思ったのは、どういう経緯からでしょう。

 何かを作りたい、何かを作ってほめられたいという欲は持っていたんだと思います。都合のいい条件が揃って、それが表に出せるようになったんでしょうね。1996年頃、ASAHIネット(プロバイダー)に入っていたんですが、そこで5MBのWebサイトスペースが使えたんですよ。仕事柄HTMLは覚えていましたし、デジカメも持っていました。これだけ揃えば全部ひとりでできちゃう。誰にも気兼ねなくできるので「あ、ピッタリ!」と思った気がします。

―― 確かに、誰にも遠慮せずに自分を出せるというのは、Webサイトならではですね。マンガや映画よりも気楽にできますし。

 そうなんですよね。特に最近思うんですけど、Webサイトは一人で作ったほうが絶対面白くなる気がするんです。仲間と作ると、ちょっと遠慮しちゃう、意見がぶつかって(相手に)合わせる、「こんなこと言ったら恥ずかしいかな」みたいな気持ちが入る。それでちょっとエッジが取れちゃうので、なるべく一人でやって妄想を形にしていくほうが面白いんじゃないかと思うんですよ。

 そうやってエッジの効いた妄想を表現物として人に見せて、「これ俺!」と自慢したい。 当時からそういう気持ちがあったんでしょうね。

―― ただ、DPZや、2007年オープンの「東京カルチャーカルチャー」でのイベントなど、多くの人を巻き込んだ取り組みもされていますね。一人が好きだと息苦しく感じたりしませんか。

 うーん、その2つに関しては(息苦しさは)ありませんね。でも、以前に雑誌で連載記事を書かせてもらったときは、勝手に気兼ねしちゃって、うまくいかなかった気がします。そう考えると、自分の意見やワガママが言える場所、制限なく自分を出せる場所というのが重要だと思いますね。たまに外の世界を覗いては、そういう場所を見つけて逃げ込んでいる感じです。

@nifty 東京カルチャーカルチャー。ニフティが運営するお台場にあるイベント・ライブハウス。「ネットとリアルをつなぐ」をコンセプトに、2007年8月から営業している

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