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週刊 PC&周辺機器レビュー 第89回

HD時代の新しい“どこでもTV” Slingbox PRO-HD

2011年02月04日 12時00分更新

文● 小西利明/ASCII.jp編集部

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LAN内での画質は非常に良好!
WiMAXくらい高速ならモバイル視聴もイケル

Internet Explorerでの視聴アプリ

Internet Explorerでの視聴アプリ。画質は5段階+自動から選べる(赤枠内)

 今回の試用では初め、リモコン設定やルーター設定をとりあえずスキップして、LAN内でまず視聴できるかどうかを試した。設定が終われば、ウェブブラウザー上でSlingboxのサービスにログインし、接続したいSlingbox機器を選ぶだけで再生が始まる。

 同一LAN上のパソコンでの視聴は、画質も鮮明で快適だ。同時にテレビでも表示しながら確認してみたが、おおむねSlingbox PRO-HDからの表示は、5秒程度遅れて表示されるようだった。これは仮想リモコンを操作しても、画面に反映されるまで5秒ほど待たされるということでもある。

 Slingbox PRO-HDは入力されたHD映像を、H.264形式でリアルタイム圧縮し、LAN端子経由で送り出す。品質については映像や回線状況に合わせて自動で変更される。同一LAN内のパソコンであれば自動のままか、(処理能力にも依存するだろうが)最高設定である「優/HD」を選んでも問題ない。優/HDのビットレートは約8Mbps程度で、再圧縮のためオリジナル映像より多少は画質が落ちるとはいえ、HD品質の鮮明な画像を楽しめる。

画質は「優/HD」

番組表で見比べた表示品質の違い。画質は「優/HD」。ソースはTZ-WR320PのD端子から出力したHD映像で、非常に鮮明だ

 5段階の品質設定のうち、中位に当たる「良」は約4Mbps弱、最低品質の「最低限」は約1Mbps程度のビットレートになる。良はまだ見られるレベルだが、さすがに最低限になるとワンセグ放送並みかそれ以下という品質だ。パソコンやLAN回線の性能にもよるが、同一LAN内ならば良以上での視聴が望ましい。

画質「良」

画質「良」の状態。文字はかなりつぶれているが、なんとか判別できる程度。映像自体は鮮明さには欠けるが、内容は十分見られるレベル

画質「最低限」

画質「最低限」の状態。漢字やひらがなの判別は困難。映像もかなり低画質で、フレームレートは30fps程度あるようだが不鮮明

 現時点で日本向けには公開されていないのだが、SlingboxのサービスはiPhone/iPadやAndroid端末、BlackBerryなどでも視聴できる「SlingPlayer Mobile」(有料、29.99ドル)が提供されているのも、大きな特徴となっている。

 日本向けは正式発売と同時期に提供開始の予定であるため、例えばiPhone/iPad用の場合、今はまだ日本向けのApp Storeには登録されていない。今回は特別に米国のApp Storeで配信されているiPad用アプリを導入して、モバイル環境での視聴を試してみた。記者のiPadはWi-Fiのみのため、手持ちのモバイルWiMAXルーター(Aterm WM3300R)を使った無線LAN~WiMAX接続となる。

iPad用の「SlingPlayer Mobile」

iPad用の「SlingPlayer Mobile」でも、初回はメールアドレスとパスワードを設定してログインする

視聴中の画面

視聴中の画面。左右に見えるのは仮想リモコンで、リモコンの4方向ボタンや決定ボタン、チャンネルボタンの機能を果たす。仮想リモコンは4種類のボタン配置を用意

 iPad用のSlingPlayer Mobileは、横画面での表示しかできなかったり、仮想リモコンのすべてのボタンが使えるわけではなかったり、なぜかiPad側面のミュートスイッチが効かなかったりといった問題点もある。だが、回線状態さえよければかなりの高画質で視聴できる。

iPadでの「HQ」表示

iPadでの「HQ」表示。画質は驚くほど鮮明で、同一LAN内のパソコンで見る「優」に匹敵する

iPadでの「SQ」表示

iPadでの「SQ」表示。さすがに文字の鮮明さは落ちるが、パソコンの「良」程度の画質はある。ビットレートは1Mbps弱

 上掲の画像は、自宅内からWiMAX経由で接続したiPadで表示した映像だ。HQはほぼパソコンの「優/HD」~「優」程度はあり、HD映像ならではの鮮明な映像をモバイル環境で楽しめる。この状態での回線速度は、下り2.7Mbps程度なので(iPhoneアプリの「Speedtest」で測定)、WiMAX環境としてはそれほど速いわけではない。それでこの画質というのは驚いた。回線速度さえ十分なら、3G携帯電話のテザリング機能を介しても、同様の視聴環境を実現できるだろう(ただし、通信データ量が非常に大きく帯域制限をかけられかねないので、3Gでの利用はあまりお勧めはしないが)。

 一方、アスキー・メディアワークス社内から同じモバイルWiMAXルーターでiPadをWiMAX接続して視聴した場合、なぜか画質がSQに固定されてしまい、HQは選択できなかった。WiMAXの通信速度は4Mbps以上出ていたので、インターネット上の経路による問題かと思われる。だが、SQでもワンセグなどよりは高画質だし、なにより地デジでは見られないスカパー!HDの番組を、モバイルブロードバンドでどこでも見られるのは素晴らしい。


 今回の試用ではリモコンの設定を煮詰めきれなかったこともあり、DVRを操作しての録画や、録画済み番組の視聴までは踏み込めなかった。しかし、リモコンに必要な操作を割り当てれば、これらの機能も問題なく使えるはずだ。そうすれば自宅で録画したHD放送の番組を、どこからでも好きな時間に見られるようになる。

 また、地上波では放送していないようなスポーツ中継を、録画ではなくライブで見たいという場合にも役立つ。昨今では地上波からほとんど消えたプロ野球中継も、有料多チャンネル放送では人気のコンテンツと聞く。ライブの臨場感が重要なスポーツ中継こそ、Slingbox PRO-HDが輝くコンテンツだろう。

 放送のインターネット配信についてはまねきTV訴訟を見てもわかるように、ユーザーニーズに対してサービス提供や法整備がまったく追いついていない嘆かわしい状況にある。いずれは時間が解決する問題かもしれないが、「多チャンネルHD放送をどこでも楽しめる環境が、今すぐ欲しい!」という人にとっては、Slingbox PRO-HDは心強い味方となってくれるだろう。

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