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山谷剛史の「中国IT小話」 第77回

中国の「淘日本」で日本の商品を取り寄せてみた

2010年08月09日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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購入手続きにひと手間かかる

 いよいよ本題となる淘日本の手続き開始である。購入手続きをするには、淘宝網のアカウントが必要だ。ログインすることにより、淘宝網のアカウントの住所など個人情報が表示される。

購入を決めると支付宝のページに強制的に移動

購入を決めると支付宝のページに強制的に移動

 その後決済手続きとなるが、淘宝網は銀行振り込みなどいくつもの選択肢がある。しかし淘日本では問答無用で支付宝(Alipay)という電子マネーのような支払い代行サービスを利用しなければならない。

購入ログ。あまりに情報が少なく、中国人ならなおのこと不安になる

購入ログ。あまりに情報が少なく、中国人ならなおのこと不安になる

支払先はSOFTBANK PAYMENT SERVICE。その他の情報はわからない

支払先はSOFTBANK PAYMENT SERVICE。その他の情報はわからない

 当然、支付宝の会員でないと利用できないし、支付宝に料金をチャージするプロセスが必要であり、銀行振り込みなどより1ステップ余計に手続きがかかる。支払いはSOFTBANK PAYMENT SERVICE宛に行なわれた。このSOFTBANK PAYMENT SERVICEの正体が見えないあたり、中国人利用者から言わせれば不安になる。

 淘宝網ならば、購入元の情報が見られ、利用した配送会社も配送番号も分かるので、今購入した商品がどこにあるのかも把握できる。しかし淘日本ではまったくそれが見えない。支払い相手もよく分からなければ、配送会社も配送番号も教えてもらえないので、商品が日本にあるのか中国にあるのか、税関を通ったかもわからない。

 淘宝網ユーザーならば、大金を支払い済みの後連絡もなく、本当に届くかどうかも不安となろう。

オーダーから15日後に届いたパッケージ

オーダーから15日後に届いたパッケージ

梱包物に入っていた紙

梱包物に入っていた紙

中国の配送物的なツブレ感はあるが、中は確かに日本的梱包だった

中の箱は少しつぶれていた。ギフトには厳しい

 筆者の場合、購入ボタンを押してから15日後に突然それは届いた。確かに届いたが、エアパッキン、いわゆるプチプチに丁寧に包まれていた商品にも関わらず、箱自身は四方からの圧力により、ギフトセットとして渡すには失礼なほどの形状となっていた。

EMSなら配送番号を教えてくれてもいいものを

淘日本でのログ

淘日本でのログ

支付宝の利用経歴でも、淘日本での購入記録には詳細が書かれていない

支付宝の利用経歴でも、淘日本での購入記録には詳細が書かれていない

 香港にある中国流通王(Score Japan)という日系企業から、EMSで配送されていた。配送料は26元(約350円)。EMSなので当然配送番号を教えてもらえれば追跡もできようが、それすらないというのは購入者に失礼であり、サービス改良の余地ありと感じた。


日本から取り寄せたものだけに品質は大事

賞味期限が中国人を怒らせた

 話はこれで終わらない。中国人の知人らに届いた醤油2本と、海苔、かつおつゆを「淘日本で買ったよ」と見せると、彼らは「なんだこれは!」「送り返せ!」と怒り、「淘日本の消費者センターに今すぐ連絡しろ」というのである。

 なんのことかと聞いてみれば、醤油の1本が2010年11月に賞味期限切れとなっていて、これが問題だという。他のものについては賞味期限は2011年までとなっている。ひとつ、賞味期限が近いモノが入っているのがよろしくないのだ。

 Yahooショッピングや、淘日本の該当ページを見ると「賞味期間:製造日より常温にて約10ヵ月」とは書いてあるけれど、「賞味期間が10ヵ月の商品です」とは言っていないので嘘ではない。

 日本人としては「まあ500mlの醤油なんて11月までにあっという間に使い切るさ」と妥協してしまいがちだが、ある知人は「賞味期限が近い商品はスーパーなら値引きされる。それすらない」と憤る。

 さらに別の知人は「中国向けだから賞味期限に近いモノを混ぜたのか!」なんて言っていた。「いやいや、ギフト商品自体、ショップで中身をすり替えることは基本ないだろうから、それはない」とは言ってその場を収めたものの、1ショップ(元を正せば1メーカー)の商品の結果、日本のオンラインショップへの信頼が下がり、QQなどによる口コミで中国全土に悪い噂が広がりかねない。

 信頼のある日本から取り寄せた商品に裏切られたときのショックは計り知れない。場合によっては中国の消費者は日本の消費者よりもずっとシビアな場合もある。モノ作りの現場は売る相手がもはや日本人だけではないのだから、より厳しく商品管理する必要があるだろう。

 淘日本での注文は、日本のものが買えて嬉しい反面、オーダーした商品が今どこでどうなっているか、誰が送っているのか何もわからず不安になるものだった。また在中日本人から言わせれば「淘宝網・支付宝に登録していないと利用できないので手続きが面倒」「届いたパッケージにゲンナリ」、在日中国人から言わせれば「購入元が見えず届くまで極めて不安」「送料が高い」といった感想だろう。

 「中国人は信用できない」「日本人は信用できる」の前提の元に「日本は信用できるだろ、だから黙って待ってろ」という日本側のサービスの姿勢は如何なものかと感じた。

 それと、結局知人らが淘日本の消費者センターに電話し「後で折り返し電話する」と回答をもらったが、来た回答は「賞味期限が2、3日ならなんとか対策を考えるが、数ヵ月なら妥協するしかない」というもの。中国人の知人らはうなだれた。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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