中国ソフトベンダーの仁義なき戦い!?
海賊版Windowsではアクティベーションができず、OSそのものの更新ができない。海賊版Windowsが普及する中国だけに、それをフォローするソフトが存在し、なおかつそのフリーソフトは、必ず入れたいソフトのひとつと言われるほど人気である。
ソフトの名は「360安全衛士」。奇虎360公司(関連サイト)という企業がリリースしている。同社は柱となる360安全衛士以外にも、セキュリティ機能を重視したタブブラウザーやアンチウィルスソフト、スパイウェア駆除ソフト、各サイトへのユーザー&パスワードの盗み見防止ソフトなど、様々なセキュリティ関連の製品をリリースしている。そしてこれらのソフトは、海賊版を利用されやすいというお国柄がため、無料で提供されている。
筆者は現在、メインのタワー型PCにWindows 7日本語版と、Windows Vista簡体字中国語版をデュアルブートできる形でインストールしている。簡体字中国語版環境はできるだけ普通の中国PCユーザーと同じようにすべく、「QQ中国語版」(関連記事)を入れたし、360安全衛士をインストールした。
もちろん筆者の簡体字中国語版Windows Vistaは正規版である。それも日本と違って、電脳街で相当な苦労の末、取り扱い店を探し当てた貴重品である。当然アクティベーションもできたし、その時々で全てのアップデートを行なっているが、それでもまだセキュリティホールがあるのか、360安全衛士は、パッチをダウンロードしインストールしろと勧めてくる。
仁義なき戦いというのか、中国流のつぶし合いというのか。(奇虎360は自社製品利用者を増やすべく)日本でも展開しているキングソフト(金山軟件)のファイアウォールソフトが導入されているPCに360安全衛士最新版をインストールすると、前者をアンインストールするという荒技を行なった。
当然キングソフトもユーザーも反発、同社は360安全衛士をインストールしないように呼びかけた。奇虎360も「自社製品のほうが性能が高いのでユーザーのため当然」と自己の行ないを正当化し、一切引かない状態となっている。
中国のIT業界に限定してウォッチする限りでも、こうした企業同士の対立、ニュースメディアへのコメント合戦は珍しくはない。
しかし両社のCEOそれぞれが「twitter」のような中国製ミニブログで自社の正当性をつぶやいているのを今回初めて見た。お互いが相手の土俵に入ろうとせず、あくまで相手をフォローせず、自分の場所でひたすらつぶやいているところに、どことなく中国人気質と日本人気質の違いが見れて面白い。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)
この連載の記事
-
最終回
トピックス
中国ITの“特殊性”を100回の記事から振り返る -
第99回
トピックス
受注が急増する中国スパコン事情 -
第98回
トピックス
Twitterもどきの「微博」対応に奔走する中国政府 -
第97回
トピックス
検閲厳しく品質がイマイチな中国地図サイト事情 -
第96回
トピックス
iPhoneが大好きな中国人、その実態とは -
第95回
トピックス
中国から学ぶネットリテラシーの上げ方 -
第94回
トピックス
香港電脳街へのいざない -
第93回
トピックス
中国とVPNの切るに切れない関係 -
第92回
トピックス
中国でデスクトップPCを修理する(後編) -
第91回
トピックス
中国でデスクトップPCを修理する(前編) -
第90回
トピックス
中国ネットユーザーが創り出す新しい日本旅行のスタイル - この連載の一覧へ