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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第6回

三洋電機買収でパナソニックが進める、ABCDE戦略とは?

2010年02月01日 09時00分更新

文● 大河原克行

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電池はエレクトロニクスから、環境対応車を主軸に

 また、リチウムイオン二次電池事業も両社が得意とする領域であり、シナジーが期待できる。

 「三洋電機との技術の融合による商品力の強化、生産能力の拡大に加えて、車載用、家庭用市場への提案力にも力点を置き、2015年度には売上高1兆円以上、シェア40%以上を目指す」と、こちらも意欲的な計画を掲げる。

 パナソニックの試算によると、2次電池の市場規模は、2018年には、2008年度比2.5倍に拡大し、5兆4000億円規模が見込まれるという。そのなかでも、2009年度には6000億円の市場規模であったリチウムイオン電池が、この10年間で5.3倍もの成長を遂げ、3兆2000億円の規模にまで拡大すると見ている。2次電池市場全体におけるリチウムイオン電池の構成比は約6割に達する。

 そのリチウムイオン電池の成長を支えるのは、これまでのノートPCなどのモバイル機器ではなく、電気自動車や電気二輪車などの環境対応車となる。2018年度には、環境対応車における電池需要は、2010年度の17倍となる3万8000MWhにまで拡大すると見ているからだ。

 パナソニックでは、大阪・住之江に、エナジー社住之江工場を建設。2011年度のフル稼働時には、月産5000万個、年間6億個のリチウムイオン電池を生産する体制を整えており、これに三洋電機の事業ノウハウを加えることで、事業拡大の地盤は万全になると見込む。

エナジー事業は、成長分野である

 「いまは両社をあわせても35%のシェアであり、まだ65%の未開拓市場がある。そこをどうするかを考えていく」と大坪社長は、この分野での取り組みをさらに加速させる考えだ。

 そのほかにもシナジー効果が期待できる事業領域がある。エネルギーマネジメント事業では、創エネ、蓄エネ、省エネ機器から、それらをつなぐ配線、配電までを手がけるパナソニックグループの強みを生かしながら、新たなビジネスモデルを構築。冷熱コンディショニング事業では、パナソニックが民生用で培った省エネ技術や、三洋電機の業務用冷熱システムの強みを融合させることで、スーパーやコンビニエンスストア、レストランなどの店舗に対して、総合的な冷凍空調ソリューションを提供する。

 また、エコカー市場でも事業拡大に取り組む姿勢を見せ、先に触れたリチウムイオン電池に加えて、熱システム、電源システムの3つを重点分野での事業展開を加速。具体的には「EV用電池の高性能、低価格化」「ヒートポンプ技術を使った冷暖房の省電力化」「低損失パワー制御技術による簡単・安全な急速充電の実現」といった観点から、次世代の主力とみられるEV市場での存在感を高める考えだ。

 さらに、パナソニックでは、4月1日付けで、エナジーソリューション事業推進本部(仮称)を設置する予定で、三洋電機までを含めたグループ横断型でのエネルギーマネジメント事業推進体制を整える。

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