小さなお菓子メーカーに勤める新入社員の津井田くんは、社長の一声でBI導入検討を任されることに。お目付役の土須先輩とともに、BIの勉強を始めます。
津井田 先輩、BIって知ってますか?
土須 友愛なら知ってるぞ。
津井田 相変わらずつまんないですね。BIっていうのは、Business Intelligenceの略ですよ。
土須 ほぉぉ、インテリジェンスね、佐藤優の世界だな。
津井田 お! いいこと言いますね! 結構近いですよ。
土須 そうかいそうかい。まあアレだな、日本語だと「Information」も「Intelligence」も「情報」ってことでひとくくりされちまうが、実はこの2つにはエライ違いがあるんだな。単純な情報がInformationで、それをつなぎ合わせて活きた情報、言ってみれば「知」を紡ぎ出したものが「Intelligence」ってワケだ……てな感じのことを、昔NHK週刊こどもニュースの池上彰パパが言っていたぜ。
津井田 そうです! まさにBIって、今まで扱ってきた業務データを組み合わせて分析し、経営戦略に役立てようって代物なんです。それにしても、単なる受け売りを自慢げに話すなんて、恥ずかしくて僕にはできません。
土須 伊達にリーマン生活が長いわけじゃねえんだよ。受け売りすらできねぇお前は修行が足らん。ところで、何で俺にそんな話をするんだ?
津井田 社長から、BIについて調べろって言われて勉強中なんです。土須先輩にも手伝ってもらえって。
土須 バカヤロウ! 余計な仕事を咥えてきやがって! サラリーマンのホウレンソウ「放置・連休・早退」を守れって、いつも言ってるだろうが!
津井田 いや聞いてないし。それに、そのネタ最近Twitterで流行ったネタですよね。パクリごちそうさまです。とにかくまずは、BIの何たるかから勉強しましょう。
BIとは何か
数年前からBI=Business Intelligence(および類似の概念)が何度か注目を浴びてきている。不況が続く今、市場の荒波を乗り越えるために必要なツールとしてBIが再び注目されている。
そもそもBIとは何であろうか。
簡単に言えば、必要な情報を素早く手に入れるためのツール、である。市場が激変する現在、社内、社外の変化にいち早く対応しなければならない。BIで素早く情報を入手することでそれらの変化への迅速な対応が可能となるのである。
企業には会計システム、販売管理システム、在庫管理システム、生産管理システム、ERP、CRMなど多くのシステムが存在する。日々の企業活動の中で、これらのシステムには膨大なデータが蓄積されている。しかし、これらの情報を活用することができていないケースが多い。
業務システムは多くの場合、経理や販売といった特定の業務のみを扱う。そのため、システムごとに扱う業務データが分かれている。それらのデータを組み合わせて分析するためには手作業で集計する必要があり、手間と時間がかかる。日常の業務でこのような集計作業が繰り返されており、毎月丸々3日をこうした作業に費やすといった事例もある。
また、数字に強い社員はシステムのデータをかき集め、Excelを駆使して高度な分析ができるが、それ以外の社員はそのようなことができない。また、どのシステムのどのデータが目的に合致したデータなのかが分からず、正しく分析できていないということもある。結果として、システムにせっかくためた有用なデータがフルに活用されていないという状態になってしまっているのである。こうした問題を解決するのがBIとなる。
BIによって大きく次の2つのことが可能になる。
- 複数のシステムのデータを統合する
- →複数の業務システムに分かれたデータの集計作業が不要になる
- 業務の目的に最適な方法で情報の取得を可能にする
- →誰もが高度な分析が可能になる
- →繰り返して行なわれているデータの加工作業が不要になる
本頁の最後にBIの適用領域について触れておこう。業種の面では、よく知られた例ではスーパーなどの小売業での売上分析などがあるが、どの業種においてもBIによる分析は有用であろう。
次に利用者の面では、以前は分析スキルを持った一部のパワーユーザーに限られていた。しかしBIが発展するにつれ、経営者や一般ユーザーにも利用者が広がっている。
機能の詳細は次回以降でご説明するが、ユーザーの役割と利用する主な機能は次のようになるだろう。
- 経営層→ダッシュボード機能
- パワーユーザー→分析機能
- 一般ユーザー→定型レポート・アドホックレポート機能
BIツールの主な機能
それでは、BIツールにはどのような機能があるのだろうか。詳細は次回ご説明することとし、今回は先に書いたBIによってできることとそれを実現するための機能の関連について説明する。
複数のシステムのデータを統合する
複数システムの統合を可能にするのが、「ETL機能」と「データウェアハウス(DWH)」である。
ETLとはExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(ロード)の3つの単語の頭文字を取ったもので、業務システムなどに蓄積されたデータを抽出し、DWHなどで利用しやすい形式に変換し、対象となるデータベースに書き込む機能である。
DWHとは業務システムなどのデータを分析に適した形で時系列に蓄積する、大規模なデータベースである。スタースキーマと呼ばれるデータ構造で作成されることが多い。
ETLで複数の業務システムのデータを抽出し、システム間のデータを埋めたりスタースキーマなど分析に適した形にするために加工し、DWHに書き込む。これにより、DWHには分析に必要な全てのデータが存在した状態となる。
業務の目的に最適な方法で情報の取得を可能にする
情報の取得は、レポーティング機能、分析機能、ダッシュボード機能によって実現する。利用者が経営層なのか、管理者なのか、現場の担当者なのか、といった役割に応じて必要な情報も異なる。こうした役割や利用目的によって使用する機能を使い分ける。
次ページ「BIツールの現状」に続く
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