2009年、アバイアのもっとも大きな発表が仮想化プラットフォーム「Avaya Aura」である。コールセンターやUC(Unified Communication)を手がけるアバイアがなぜ仮想化技術に取り組むのか? 日本アバイア株式会社 ソリューションマーケティング シニアマネージャー 能地 將博氏に聞いた。
実はけっこう大変だった仮想化
Avaya Auraとは、同社のコンタクトセンターやUC製品の基盤となるプラットフォームを指す。XenハイパーバイザーをベースにしたAvaya Aura System Platformに、さまざまなサービスを統合しようというのが、基本的なコンセプト。今後アバイアが開発するアプリケーションの統一プラットフォームになる。
では、なぜ仮想化するのか? UCによるコミュニケーションの促進は、多くの企業が導入したいソリューションとしてつねに上位に挙がる。しかし、UCはUnifiedという名前の通り複数のサービスを統合してソリューションとして機能させるため、サーバーが何台も必要になる。
そもそもIP電話では音声通話自体が、呼制御とメディア伝送という2つのプロトコルで構成されているため、PBXとSIPサーバーは論理的に異なる存在だ。加えて、従来の音声通話やサービスとの連携にもゲートウェイ装置が必要になるし、UCならではのボイスメールやCTI、EメールやFAXとの連携、モバイル環境のサポートなどを実現しようとすると、「けっこうな数のサーバーを用意しなければなりません。これは特に中小中堅企業にとっては大きな障壁です」(能地氏)となってしまう。
これに対して、Avaya Auraのような仕組みで、サーバーをハイパーバイザー上に載せれば、今まで個別に必要だったサーバーの台数は少なくなる。ハードウェア購入や電力・冷却のコストも抑えられ、シンプルな構成になるため、導入も管理も容易になる。
具体的にはXenハイパーバイザーの上に、Linuxと各種のサービスが稼働している。そして、動作が検証された複数のサービス群を「テンプレート」と呼ぶ。ユーザーはこのテンプレートをインストールし、ネットワーク設定を行なえばよい。
こう聞けば簡単そうだが、ここに行き着くまではけっこう大変だった。TCPのようなセッションベースのやりとりならともかく、音声通話やビデオのようなストリーミングを仮想化環境で扱うのは確かに難しい。能地氏は「リアルタイムでの呼制御において、ストリーミングを扱うのは難しい。実は一度挫折して、再度作り直したのがAvaya Auraなんです」と、「業界初」を名乗るまでに実は苦労の末のリリースであったことを語る。
中堅向けにまとめてみました
Avaya Aura for Midsize Enterprise
2009年の3月に発表されたAvaya Auraだが、先頃11月に中堅企業企業向けとして発表されたのが「Avaya Aura for Midsize Enterprise」である。
Avaya Aura for Midsize Enterpriseでは、単一のサーバーにIP電話とCTIの基盤機能を統合したモノで、最大2400ユーザー、250拠点をサポートする。
具体的に統合されるのは「Communisation Manager」、「Communisation Manager Messaging」、「Application、Enablement Services」、「SIP Enable Services」といった製品群のほか、メディアゲートウェイの「Media Services」とユーザー管理用の「MyPhone」、IP電話のファームウェア管理ツール、DHCPサーバー、HTTP/HTTSPSサーバーを含む「Utility Services」などが統合されている。これを導入することで、「PBX、ボイスメール、CTI、SIPサーバーなど、今まで5~6台必要だったサーバーが1台に統合化され、コストパフォーマンスも高くなっています」(能地氏)という。
コストメリットのみが訴求されたIP電話だが、実際はその次にあるコミュニケーション手段の拡充や豊かなアプリケーション連携に魅力がある。その点、こうした魅力を提供するUCが、コストにセンシティブな中堅・中小企業に対して手頃な価格で入手できるというになるのは望ましいだろう。
初出時、能地氏のお名前に誤りがありました。お詫びして、訂正させていただきます。(2009年12月14日)