米アバイアは、カナダのノーテルのエンタープライズ事業を4億7500万ドルで買収したことを発表した。アバイアは、2000年にルーセント・テクノロジーから独立したベンダーで、IP電話やコールセンター系のビジネスソリューションを手がけている。今回のノーテルのエンタープライズ事業買収にともない、音声、データ、および公共機関向けシステム事業などの製品が大幅に拡充されることになる。
100年の歴史を持つノーテルの紆余曲折
ノーテルは創業から100年以上の歴史を持つ名門だ。1895年で、ノーザンエレクトリック・アンド・マニファクチャリング(Northern Electric and Manufacturing)という電器機器メーカーからスタートし、1975年に初めてデジタル交換機を出荷。1976年にノーザンテレコムに社名を変更し、1979年に開発したデジタル交換機「DMS-100」で一躍シェアを高める。その後、IPネットワーク時代の登場を受け、1998年にスイッチやルータを手がけていたベイ・ネットワークスを買収し、社名をノーテル・ネットワークスに変更。2000年にはアプリケーションスイッチベンダーのアルテオン・ウェブシステムズを買収した。
しかし、ドットコムバブルの崩壊の余波を大きく受け、他の通信機器ベンダーとともに業績は一気に低迷。2001年からのリストラでは、9万5000人近くいた従業員が約半分になり、2004年には不正会計スキャンダルが発覚。モトローラ出身のマイク・ザフロフスキー氏をCEOに再起を図り、マイクロソフトとの提携によるユニファイドコミュニケーション事業やWiMAX技術・製品化のためにLG電子と合同で設立されたLGノーテルなどの試みに活路を求めた。しかし、2008年の金融不安などもあり、2009年1月に連邦破産法11条の適用を申請し、破産。その後、経営再建は断念し、清算のために事業の売却を図っていた。なお1月の破綻以降、旧アルテオンのアプリケーションスイッチ事業はラドウェアに、ワイヤレス事業はノキア・シーメンスに売却されている。
ベル系の会社からスタートし、通信機器分野で長い歴史を持つ点、IP系事業に乗り遅れた点、そしてドットコムバブルの波を大きく受けたといった点でノーテルとルーセントは、かなり近い境遇にあった。だが、交換機系・IP電話系など膨大な製品ポートフォリオを持つ続けたノーテルに対して、ルーセントはコンシューマ系の事業を売却。ビジネス系部門をアバイア、マイクロエレクトロニクス系部門をアギア・システムズとして独立させ、ルーセント自らもアルカテルと合併し、生き残りを模索した。結果として、アバイアがノーテルの事業を買収することになったのは、運命のいたずらを感じずにはいられない。DWDMやワイヤレスメッシュ、ユニファイドコミュニケーションなど、ノーテルが長年培ってきた卓越した技術が、さまざまな製品の遺伝子として残り続けることを望みたい。