「Avaya Asia Pacific Partner Conference 2009」レポート【前編】
アバイアがノーテルを買収したこれだけの理由
2010年02月02日 09時00分更新
1月26日~28日の3日間、アバイアは北京において「Asia Pacific Partner Conference 2009(以下、APPC 2009)」を開催した。アジア・太平洋地域のパートナーやプレスが一同に会したイベントで、同社はノーテル買収後の戦略やロードマップを明らかにした。
アバイアの立ち位置とノーテルとの統合
4日間に渡って行なわれたAPPC 2009には、アジア・太平洋地域のパートナーとアバイアの社員、プレスたち約600人が参加し、さまざまなセッションが設けられた。また、中国や韓国、インド、オーストラリアなどの各メディアの質問に答えるプレス向けのインタビューも行なわれた。これらのセッションやインタビューでは、社長兼CEOであるケビン・ケネディ氏をはじめ、アジア・太平洋地域での製品開発、マーケティング、営業などのトップがずらりと顔を揃え、統合後の戦略について説明を行なった。
まずはイベントの講演内容を基に、同社の立ち位置と概況について、おさらいしておこう。
アバイアはコンタクトセンターの分野で高いシェアを持つベンダーだ。事業分野ごとに分割されたルーセント系の企業の中ではもっとも成功しているといえる企業で、2007年に投資会社の傘下に入り、非上場企業となったものの、コンタクトセンターにフォーカスすることで収益を拡大。特に日本では通信販売会社のトップ10社すべてがアバイアのコンタクトセンター製品を導入しており、競合に比べて高いシェアを誇っている。
そして、昨今では企業向けのUC(Unified Communication)の分野で積極的に製品を展開している。既存の電話やビデオ、データを統合する新しい企業向けのコミュニケーションツールであるUCの市場は今後高い成長が見込まれており、シスコシステムズやマイクロソフトなどの大手ITベンダーが次々と製品を投入している。特にこの分野へのシスコの意気込みは尋常ではなく、WebEXやタンバーグなど数々の会社を買収して、製品ポートフォリオの拡充に努めている。昨年11月、日本でも全61製品という大量の新製品投入を行ない、業界を驚かせた。
こうしたなか、アバイアが昨年投入したのが、コンタクトセンターとUCのコミュニケーション基盤をSIPで統合する戦略製品群「Avaya Aura」である。2009年11月にはAvaya Auraを中堅企業向けに展開するためにリアルタイムに仮想化を実現した製品をリリースした(【関連記事】中堅企業もAvaya Auraの仮想化で「IP電話>UC」へ)。さまざまな通信手段を統合し、ユーザーデータベースと結びつけるUCは、機能ごとに製品が存在しており、それぞれサーバーや管理ツールを導入する必要があった。ユーザー認証用のデータベース、IP電話を実現するためのSIPサーバー、ユーザーの状態をリアルタイムに知るためのプレゼンスサーバー、既存の電話システムとのゲートウェイ、そして統合管理用のサーバーなど、高度な機能を実現しようとすればよりサーバーは増える。一方、Avaya Auraは、Xenのハイパーバイザを用いることで、サービスの統合を実現するプラットフォームを指す。今まで複数必要だったサービスを単一のハードウェアに統合し、コストの削減やシンプルな管理を目指したものだ。
そして、同社が次にとったアクションがノーテル・エンタープライズ事業の買収だ。ご存じのとおり、ノーテルは2009年1月に会社更生法にあたるチャプター11を申請し、事実上破産した。結果的に同社の資産はエリクソンやノキア・シーメンス、ラドウェアなどに切り売りされ、最終的に残ったエンタープライズ事業をアバイアが買収したわけだ(【関連記事】アバイア、ノーテルのエンタープライズ事業を買収)。
そして、2009年12月には買収の完了を発表し、ロードマップも公開。そして、ロードマップの詳細や営業・マーケティング体制の刷新などが明らかにされるのが、今回開催されたAPPC 2010になるわけだ。もとよりアバイアは期の始まりにあたる10月にこうしたイベントを開催することが多かったが、ノーテルとの統合に合わせ、あえて1月開催になったようだ。
(次ページ、ノーテルとの合併はなぜスムースだったか?)
