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山谷剛史の「中国IT小話」 第58回

中国人のオンライン転売事情

2009年11月10日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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売り手は「手軽に素早く」売ることを目指す

電脳ビルの正体は小さい店が密集する巨大雑居ビルだ

電脳ビルの正体は小さい店が密集する巨大雑居ビルだ

 ところで電脳街は、その名が示すとおり、PC関係のショップが集まるエリアである。そこにはランドマークとなる、無数の小さなPCショップが集う超巨大雑居ビルはあれ、ヨドバシAkibaのような大きなショップはない。レノボ専門店、モニター専門店などはあれ、PCパーツが好きな人がいつも立ち寄りたくなるような名物ショップというのはない(筆者は中国に主に滞在こそしているが、この理由から電脳街には足があまり向かない)。

 つまりはどのショップも差別化がなく、PCが好きでたまらないという店長も少なく、どのショップも似たようなものを販売しているため、結局のところ「どの店が一番安いのか」という点に終始することになるわけで、逆に言えばショップ側としては果てしなき値引き競争をすることになる。

 これは電脳街に限った話ではない。各都市には中古街や自転車街、建材街、ペット街など、特定の製品ジャンルに関する商店が1ヵ所、大都市でも数カ所に集中する傾向がある。同じ製品ジャンルなら分散して店があったほうが、価格競争にならないし、都市の東西南北各地に住む人それぞれが近所に店があるわけで、売る方も買う方もハッピーのはずなのだが、そうはならない。

 これはモノ作りにしてもそうで、アキバで入手できる中国製のノンブランドガジェットしかり、「山寨機(関連サイト)」しかり、既存部品をつなげただけの付加価値のない製品ばかりを作る傾向がある。つまり中国人はモノを売るにしても作るにしても「手軽に素早く売る・作る」ことこそが重要で、「差別化」「付加価値」をつけないあたり、日本人とは全く性格が異なるわけだ。


オンラインショップを売買するための「バーチャル不動産」情報

 オンラインショッピングに話を戻そう。筆者自身、中国の怪しげなデジタルガジェットをしょっちゅう購入している。買うと決めたら「Amazon中国」など様々なサイトで値段をチェックするのだが、結局いつもオンラインショッピングサイト、それも「C2C」(Yahoo!オークションのような個人対個人取引)のほうがずっと安く買えるため、中国のC2Cのオンラインショッピングサイトの代表格「淘宝網(TAOBAO)」で購入している。

 淘宝網での取引相手は企業ではなく個人なので、値引き交渉にも応じてくれる。ほんの半年前、1年前は値引きも交渉の末に応じてくれたのだが、今は応じてくれるショップは僅かだ。よくショップ店員は「これ以上安くしたら利益がでないんだよ」と嘆く。一攫千金のはずのオンラインショッピング市場には既に1000万人以上のショップ店員なり店長がいて、やはり街の電脳街や自転車街のような、利益なき価格競争に陥っているのだろう。

 このオンラインショッピング市場に少なくとも数年は、独立を夢見て、または職が見つからず続々と若者が参入するわけで、数年後にはショッパー人口とショップ数が数倍にも膨らむことだろう。

 淘宝網で最近「秒殺」という先着数名限定の激安タイムセールサービスが追加された。しかしオンラインゲームでも自動的に作業するプログラム「ボット」の利用が目立つ中国、当然のように秒殺サービス落札用ツールが次々と登場したほか、秒殺サービス落札でサービス料をとるプロまで登場した。こうしたサービスは、日本のオープンセール同様、業者によって買い尽くされるのがオチのようだ。

 もうひとつ、最近の業者の面白い動きとして、信頼できるオンラインショップをつくった後、他人にそのショップごと販売するという動きがある。淘宝網はYahoo!オークションやAmazonマーケットプレイスと同じC2Cということで、そのショップが信頼できるかは、どれだけ客を失望させずに多数の商品を売買したかによる。つまりアカウントを取得し、多数の取引を成功させ、そのアカウントを他人に譲渡するというわけだ。

オンラインショップ転売を報じる新聞記事

オンラインショップ転売を報じる新聞記事

 「最高値まで信頼を上げた店舗を譲渡金8000元で(約10万8000円)」「評価5つ星店舗のレンタル費用に月1500元(約2万円)」「よい評判のショップから貴ショップへのリンクに月600元(8000円強)」などさまざまなバーチャル不動産情報がネットに流れている。

 オンラインショッピング経験済みの中国人の若者は「淘宝網で買えないものはない」と胸を張る。中国国内だけでなく、世界中の華僑もまた淘宝網を使って、世界のモノを販売しているためだ。実際日本で売られる日本向けの製品も、中国人に売れそうなものなら何でも淘宝網で売られていると思って間違いない。日本でのポイント目当てか、上乗せした為替レートで儲けを出すか、日本での代理購入は1商品1円(0.1元)なんてのもある。

日本の商品代理購入サービスを販売するオンラインショップ

 例えば「クールなメディアプレーヤーとしても使える」と中国人にも人気で中国未発売の「プレイステーション・ポータブル」。日本や香港などで発売されたばかりの「PSP go」は1650元(2万2000円)で、旧型の「PSP-3000」は1万円を切る価格でそれぞれ販売されている。PSP-3000の値段の安さもさることながら、PSP goは価格.comで表示される最安値よりもさらに安いという異常事態となっている。これも厳しい価格競争の末の激安価格なのだろう。

日本の商品の転売が円高による苦境に陥っている、という記事

日本の商品の転売が円高による苦境に陥っている、という記事

 海外の転売でのリスクは、為替変動だろう。中国メディア「法制晩報」の先月の記事に「オンラインの転売サービスで、日本向け商品販売利益激減」という記事があった。その内容は「国境を越えたオンラインショッピングによる転売で10%程度の利潤があるのが一般的だが、日本の商品の転売は欧米の商品に比べ利潤は低く、最近では一時期1ドル=88円台まで円高となり、人気の日本の商品の化粧品・デジタル製品・アパレル・腕時計をはじめ、日本向け商品の販売で得る利益は非常に低くなった」というものである。競争が過酷になるほどそれだけ多くの在日本の中国人が「転売ヤー」になっているわけだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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