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日本の小さなソフトハウスが世界を目指して

マイクロソフトとサイボウズ、資本提携は「ノー」

2009年09月29日 09時00分更新

文● 企画報道編集部

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青野社長が“自問自答”

樋口さんと青野さん

握手を交わす樋口氏と青野氏

 会見では、青野社長が記者からの質問を事前に予測して作成した「質問表」を披露。“自問自答”のQ&Aを展開して場内を沸かせた。青野氏のFAQ(?)は以下の通り。

資本提携を行なうのか?
ノーです。あくまでも技術とマーケティングの提携です。
既存製品は縮小するか?
ノーです。既存製品は開発を続けていく。今回SPで動く製品でお客様に数多くの選択肢を与えられる。
単独での事業展開に限界を感じ、マイクロソフトの支援をあおぐのか?
イエスです。自分たちの力だけではこれ以上大きくするのは難しい。マイクロソフトさんもIBMさんとの協業で成長した。今回を機に、協業で事業拡大していきたい。
勝算はあるのか?
イエス。世界で一番使いやすいグループウェアを提供します。
マイクロソフトの製品と競合するのではないか?
現時点ではノー。SharePointはインフラソフトとしての方針を持っているので、その上で安心してソフトを作っていくつもりです。マイクロソフトが(サイボウズの背品と競合する)新しいものを作るかもしれませんが、その場合はマイクロソフト ジャパンを通じて徹底的に抗議をしていきたいと(笑)


 マイクロソフトとIBMのくだりは、OS/2のエピソードもあるだけにやや微妙な気もするが、興奮気味に語る青野氏の頭には、そういう話がまったく飛んでいるように見えた。樋口氏が青野氏の大学の先輩であって、今回の提携も久しぶりの日本人社長であるから実現したと語るなど、青野氏の言動は会見を通して屈託がない。

 こうした青野氏の明るさは、2001年に米国法人を作り、2005年に撤退した無念も影響しているのだろう。今回は違う。SharePointという世界共通のプラットフォームで、マイクロソフトのエコシステムを背景にして世界に打って出る。その意気込みがありありと伝わってくる。

 とはいえ、実際のアプリケーションはまだ青写真さえ発表されていない。会見中に判明したのは、SharePointを開発プラットフォームとしてネイティブに開発していくこと、よって、データもMicrosoft SQL Serverに保存されるアーキテクチャになることなどだ。従来のサイボウズ Officeは独自のデータベースシステムを持っており、これがある意味コアアーキテクチャになっているが、エンタープライズ向けではSharePointという“下駄”によって、従来のノウハウを活用しつつ新製品を開発するという戦略だ。

 また、来年にはMicrosoft Office 2010やSharePoint 2010が登場するが、新しいサイボウズも、当然SharePoint 2010上で動作するものを開発するとのことだ。

 青野氏は、以前Microsoft WorldWide Partner Conferenceに参加した際、100か国6000人のパートナーが集まっているのを目の当たりにし、その“大きなエコシステム”が広がっているのを実感したという。そこに、サイボウズが世界に飛躍するチャンスがあると見たわけだ。

 対するマイクロソフトはどうか? 同社代表執行役 社長 兼 マイクロソフト コーポレーション コーポレートバイスプレジデント樋口泰行氏は、「SharePointはパートナーシップを前提としたプラットフォーム製品」としたうえで、パートナーとの連携は製品開発担当者同士が話をするだけではなく、「会社と会社が信頼関係で結びつかないと現実にならない」と語った。つまり、製品のみを共同開発するのではなく、営業やマーケティングも連携することで“Win×Winの関係”を築いていくのだという。

 こうした発言はまさに、青野氏が期待するところと合致している。樋口氏は、「サイボウズ Officeは、グループウェアでトップシェア。きめの細かい導入実績を武器に、日本以外のシェアポイントのインストールベースに乗せて商売をしていくことも可能になる。将来的には、日本発のソリューションを、(マイクロソフト)ジャパンとしても応援していきたい」との発言もした。

この協業によってできあがる製品の提供は、2010年上半期中を目指す。

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