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歴史を変えたこの1台 最終回

L3スイッチの代名詞「Summit」を生みだしたエクストリーム ネットワークス

LANをギガビットに導いた紫の遺伝子の軌跡

2009年08月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Extreme XOSをベースに
10Gbps Ethernetに挑む

 レイヤ3スイッチで成功を収めたエクストリームは、以降も新しい製品やサービスを次々と展開した。

 2003年以降でもっとも大きいトピックは、やはりExtremeWareの後継にあたるソフトウェア「ExtremeXOS」の投入であろう。ExtremeXOSは、複数のソフトウェアを組み合わせることで高い信頼性と柔軟性を実現したモダンなモジュラ型OSである。新しい機能を容易に追加できるほか、外部の機器やプログラムとのAPIレベルでの連携が容易になっており、現在も同社スイッチ製品の基盤となっている。「ソフトウェアとハードウェアを別々に売りたいくらい、レベルが高いものです」(西山氏)。

 Extreme XOSをベースにした新しいBlack Diamond 10Kでは、10Gbps Ethernetにもいち早く対応。また、無線LAN 製品「Altitude」やセキュリティアプライアンス「Sentriant」の製品も投入した。さらに、日本ではJDCという検証センターを設け、国内で出荷前チェックを実施する体制を構築した。

通信事業者向けのシャーシ型スイッチ「BlackDiamond 20808」では、単一ラックで192の10GbEポートを搭載できる

新製品「Summit X650」で10Gbpsの市場を狙う

 しかし、同社もすべてが順風満帆というわけではなかった。2002年以降、ギガビット市場が成熟する中で、シスコをはじめとする大手ベンダーや低価格を武器にした新興ベンダーが、エクストリーム対抗の製品を次々と投入。ITバブル以降の不況も折り重なって、厳しい状況もあったようだ。

 とはいえ、これはエクストリーム製品の魅力がなくなったためではないだろう。機器をポートに挿すだけで自動的にスイッチ側の設定を変更する「Universal Port Management」や、Webブラウザ経由でIEEE 802.1xのユーザー認証を実現する「Network Login」、最大8台までのSummit Xシリーズをパフォーマンス劣化なしで束ねる「Summit Stack」、FlashベースのGUI管理ツールなど、同社の技術は先進的でありながら、実用度も高い。

 2009年2月に日本法人の新社長に就任した浜田俊氏は、「他社では苦労しても実装できないような機能が、エクストリーム製品では当たり前のように実装されているのに驚いています。しかし、売っている当人たちもこれを当たり前と考えているので、今まできちんとアピールできなかったのではないかと考えています」と語っている。

 そして、新体制で勝負をかけるにあたって最大の武器となるのが、ツイストペアケーブルで10Gbpsを実現する10GBASE-T対応のボックス型スイッチ「Summit X650」である。業界に先駆けて2009年3月に投入された同製品の設計に大きく携わっているのは、ある日本人のマーケティングディレクターだという。「日本市場で人気の高いボックス型で、10Gbpsであっても完全にノンブロッキング。しかもSummit Stackで冗長構成を採れる点など、彼の思い入れがひしひしと伝わってきます。売り手からすると素晴らしいマシンを作ってくれたという感じです。これとBlackDiamondで10Gbps Ethernetの波を起こしたいと思います」(西山氏)と語っている。さらに将来的には100Gbps対応製品の投入も予定しており、同社製品の最大の売りであるハイパフォーマンスを追求していくことになる。

市場にいち早く投入された10G BASE-T対応のボックス型スイッチ「Summit X650」では、24ポートの10GBASE-Tポートを搭載する

 エッジでの1Gbpsの普及が進みつつある今、バックボーンの10Gbpsへの移行はまさに必至という状況である。こうした中、紫の箱が再び市場を賑やかすことは間違いなさそうだ。

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