低廉なコストで
ギガビットのワイヤスピードを!
エクストリーム ネットワークス(以下、エクストリーム)は、1996年に設立された米国のネットワーク機器ベンダーである。企業向けのボックス型スイッチ「Summitシリーズ」を中心に、シャーシ型の「Alpineシリーズ」、通信事業者向けの「Black Diamondシリーズ」などの製品を取り揃えていた。
これらエクストリーム製品は、インターフェイスに対して、処理が遅延しない「ワイヤスピード・ノンブロッキング」のパフォーマンスを大きな売りにしていた。「当時、100Mbpsからギガビットへの移行期で、お客様はエクストリーム製品に速さを求められました。うちの製品は、当初からすべての製品がギガビット対応でしたし、ギガの市場はうちが作ってきたという自負があります」と、製品に惚れて競合他社から移ってきた西山拓氏は語る。
1998年から展開してきた第1世代の製品に続き、2000年にはコードネーム「inferno」というカスタムチップを搭載した第2世代のiシリーズが登場し、より高いパフォーマンスが実現された。
その一方、多彩なルーティングプロトコルのサポートのほか、フィルタリングやQoS、各種の冗長化プロトコルなど充実した機能も「ExtremeWare」というソフトウェアで実現されていた。単にハードウェアのパフォーマンスの高さだけではなく、ソフトウェアの柔軟性も併せ持っていたのだ。これを実現したのも、ASICとソフトウェアを完全に自社開発していたからにほかならない。同社は技術者出身の創業者CEOの意向もあり、多くの利益が研究開発に投資されていたという。
外見もユニークであった。エクストリームのスイッチは、コーポレートカラーである紫と黄緑をまとっている。これは無味乾燥な黒や灰色などを配した他社の製品と一線を画し、非常に先進的で未来的な印象を与えた。「今でもうちの製品は『紫』と呼ばれていますよね。色で製品を呼ばれるところなんて、あまりないと思いますよ」(西山氏)。
そして、こうした数多の特徴を持ちながら、高価な他社のレイヤ3スイッチに比べて低廉な価格を実現した。当時から技術を担当する小池豊和氏は「48ポートを搭載している製品が、当時ほとんどなかったという事情もありましたが、やはりポート単価でのコストパフォーマンスが特に評価されていましたね」と述べている。
日本市場でも紫の炎が燃え上がる
高いパフォーマンスと豊富な機能、そして安価なコストという3拍子が揃った当然の帰結として、エクストリーム製品は、ギガビット導入の端緒についた日本の企業にアピールし、2001年頃から市場を一気に席巻した。
「オールラウンドな利用を想定した設計思想の下、文教系や官公庁、エンタープライズの市場など、ほとんどの業種・業態で幅広く受け入れられた印象です。Summit 5iと7iがどんどん出荷されたあとに、Summit 48iが登場したら、これも水のように目の前を流れていきました。また、Ethernetベースのサービスを提供したいと考えていた通信事業者さんにも、シャーシ型の『Alpine』『BlackDiamond』をかなりの台数導入してもらっています」(西山氏)という状況で、企業と通信事業者を両方とも押さえる快挙を成し遂げた。この傾向は日本で特に強く、通信事業者での採用が、企業の導入を後押ししたという状況もあったようだ。
「2003年のInteropでは、約200台のSummitがShowNetなどで利用され、ラックはほとんど紫という感じでした。あとは、当時のコーポレートメッセージであった『EthernetEverywhere』のポスターが、幕張メッセの会場に向かう参道に建ち並び、まさに紫一色になっていましたね」(小池氏)というのも、当時の隆盛ぶりを伺えるエピソードだ。
(次ページ、Extreme XOSをベースに10Gbps Ethernetに挑む)
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