本連載では、歴史を変えたネットワーク機器を紹介する。記念すべき第1回はスイッチングハブに低価格化をもたらしたメルコ(現バッファロー)の「LSW10/100-8」である。製品担当者の話を交えつつ、製品登場の背景やそのインパクトなどを紹介していこう。
8ポートで20万円!高嶺の花「スイッチングハブ」
メルコの「LSW10/100-8」はスイッチングハブの低価格化と100Mbps LANの普及に大きく貢献した製品といえる。
LSW10/100-8が発売された1998年11月当時は、ハブといっても「リピータハブ」が主流であった。リピータハブは、ケーブル上で電気信号が衝突し、ネットワークのパフォーマンスを下げる「コリジョン」を発生させる一因となっていた。原理的に受信した信号を他のすべてのポートに伝搬させるため、複数の端末が同時に通信を行なうとコリジョンが起こるのが理由だ。媒体を共有するEthernetの宿命とはいえ、端末の数が増えれば増えるほど、コリジョンが起こりやすくなるため、多くの管理者が頭を痛めていた。
これに対して、1990年初頭に登場したスイッチングハブは、端末のMACアドレスを学習し、宛先の端末がつながれているポートにしかフレームを流さないという特徴を持っていた。これにより、コリジョンは激減し、LANのパフォーマンスを劇的に向上させることが可能になる。また、電気信号を単に増幅するだけのリピータハブに対し、スイッチングハブはフレームをいったんバッファに溜めて、再送信する。そのため、10Mbpsと100Mbpsといった具合にインターフェイスの速度が異なっていても、問題なく通信できるというメリットがあった。
もちろん、当時は10Mbpsと100Mbpsを混在できる「デュアルスピードハブ」や、コリジョンを伝搬しない「ブリッジ」などもあったが、所詮は一時しのぎに過ぎなかった。LSW10/100-8の製品担当者であった根本将幸氏は「リピータハブでは増設するためのカスケード接続の段数制限がありましたし、100Mbpsになると本格的にコリジョンの悪影響が出てきました。その点、スイッチングハブでは、単にリピータハブと置き換えるだけで、コリジョンを激減させられるほか、10Mbpsと100Mbpsを簡単に混在できます。置き換えるだけで、多くの問題を解決してしまうんです」と、本命があくまでスイッチングハブであることを理解していた。
これだけ多くのメリットを持ちながら、企業ではスイッチングハブ導入に二の足を踏まざるを得なかった。その最大の理由は、8ポートモデルで約20万円という価格だ。多くの企業にとってみれば、スイッチングハブはあくまで高嶺の花であり、コスト的にリピータハブに甘んじるしかなかったのである。この状況は「スイッチング・HUBを使えばいいことは、みんな分かっていた」というLSW10/100-8の広告のキャッチにも現れている。
実はどのベンダーでも4万円で出せた
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