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エンジニアの情熱を再燃させる「Tech Challenge Party 2026」レポート 第7回

コンテンツのエコシステムをAI時代向けにアップデート

「粗悪記事」「ゼロクリック」「搾取」からクリエイターをどう守るか? AIに強いnoteが挑む創作エコシステム

2026年05月14日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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「コピペだけの粗悪な記事、ハルシネーション満載の嘘記事、連続投稿でタイムラインを埋め尽くす一種のスパム、著作権をカジュアルに侵害しているコンテンツが出回るようになり、問題となっている」と指摘するnote取締役 今雄一氏。広告モデルに依存せず、コンテンツの収益化基盤を構築してきたnoteに立ちはだかるAIの壁。生成AI時代の創作エコシステムとはどうあるべきなのか?

 ソフトウェア協会は、2026年2月、エンジニアの好奇心・探究心を再燃させるイベント「Tech Challenge Party」を開催。ビジネストラックに登壇した今氏はAI時代の創作エコシステムをどのように構築していくかのさまざまなチャレンジを披露した。

note 取締役CTO 今雄一氏

トップクリエイターの年間売上は1500万円 noteが作ってきたコンテンツを収益化できる基盤

 登壇したnote 取締役CTOの今雄一氏は、DeNAに新卒で入社し、ソーシャルゲームの開発を担当。2013年に当時ピースオブケークという社名だったnoteに入社し、エンジニアリーダーとして新規開発やグロース、組織運営までを幅広く担当してきた。

 今回の登壇のテーマは「noteが考える、生成AI時代のコンテンツエコシステム」だ。これまでnoteは「クリエイターの活動を支える基盤」として、持続可能なエコシステムを目指して設計と運営を行なってきた。しかし、AIの登場により、「創作」だけではなく、「流通/対価/信頼」の前提が大きく揺らいできている。そんなAI時代に合わせて、どのようにエコシステムの要件を更新しながら、トライを続ける重要さが講演のポイントとなる。

 ご存じnoteは、さまざまなコンテンツを誰でも簡単に公開・販売できるメディアプラットフォームだ。広告モデルではなく、有料記事やサブスク型のメンバーシップなど、コンテンツ作成の継続を支える収益化基盤をクリエイターに提供。採用や広報・IRに利用可能な法人向けの「note pro」も採用が相次いでおり、自治体、官庁、教育機関など、公的団体の利用も増加している。

 noteの現状を表す数字も披露された。年間の流通金額は213億円で、noteのトップクリエイター1000人の年間平均売上は1515万円に達する。noteでの購入経験者も438万人を超え、月の支払金額は2657円。note発の書籍もすでに320冊を超えており、「正直、僕たちも追いきれない(笑)」(今氏)という状態。日本有数のメディアプラットフォームとして、着実に成長してきたことがわかる。

noteの現状を表すさまざまな数字

価値の循環を続ける「インターネット時代」のエコシステム

 続いてnoteが長らくこだわってきた「創作のエコシステム」について今氏は説明する。

 noteが考えるエコシステムは、個々の機能ではなく、「価値が循環し続ける仕組み」を指しており、いい作品を生み出し続ける「創作(CREATION)」、広く人々に届けられる「流通(DISTRIBUTION)」、コンテンツに対する課金の仕組みと文化を作る「収益化(FINANCE)」の3つの要素から構成される。「この3つが噛み合わないと、創作>流通>対価>次の創作というループにならない」と今氏は語る。

noteが提供してきた価値が循環する仕組み

 決算説明会の資料では、このモデルを「noteの街」と呼んでいる。クリエイターが集まれば、コンテンツが増え、読者が集まる。読者からシェアされたり、コンテンツが売れれば、認知が拡大し、さらにクリエイターが集まるというサイクル。現状、有料コンテンツは24.3%(2025年11月末時点)だが、その他の無料記事はネットワーク効果で読者をnoteに惹きつける広告宣伝的な役割を果たしているという。

 多様なクリエイターとコンテンツを集めるため、noteは直感的で書きやすいエディターを搭載している。また、SEO対策が強く、拡散されやすいだけでなく、安心して作品を発表できる雰囲気も形成されている。これにより、広告宣伝費をかけずに自律的に拡大するグロースモデルが実現されているという。

 これがnoteが築いてきたインターネット時代の創作のエコシステムだ。今氏は、「(noteは)出版やテレビ、ラジオのようなオールドメディアの広告モデルがサステイナブルにならないことを見越して、インターネット時代の創作のエコシステムを構築すべく、12年前に始まった会社。当時の課題としては正しかったが、現在はこうしたエコシステムも当たり前になりつつある」と語る。

生成AIの台頭で激変するコンテンツ&メディアの世界

 一方で、外部環境の変化としてもっとも大きな課題になってきたのが、生成AIの台頭だ。「当社の最重要課題も『AI時代の創作のエコシステムをどう作るか』になっている」と今氏は語る。

 AI時代を迎え、創作のエコシステムは大きく変わってきた。前述したサイクルの創作(CREATION)という領域では、生成AIで誰もがコンテンツをサクッと作れるようになった一方、コンテンツの品質が大きな問題となってきた。「AIを使って、うまくまとめた記事がある一方、コピペだけの粗悪な記事、ハルシネーション満載の嘘記事、連続投稿でタイムラインを埋め尽くす一種のスパム、著作権をカジュアルに侵害しているコンテンツが出回るようになり、noteでも問題になっている」と今氏は指摘する。

AI時代の創作エコシステムの課題

 また、流通(DISTRIBUTION)の観点では、AIによる要約が標準的となり、元サイトに来ない「ゼロクリック問題」が顕在化するようになった。さらに収益化(FINANCE)という観点でも、元の記事がLLMやRAGに取り込まれても、権利や対価が不明確という状況だ。もちろん参照されても、クリエイターに還元されず、見方次第では「搾取されている状態」に陥っているという。「人間がこれまでの表現活動、経済活動を続けるための動機づけ(インセンティブ)を根本的に覆すいくつかの出来事が起こっている」と今氏は指摘する。

 では、こうしたAI時代にエコシステムの要件はどう更新されるべきか? 「この概念も日々流動的である」という前提としつつ今氏は、いくつかの方針を披露する。

 まずは良質なコンテンツを集積し、AIに「一次情報として認識してもらう」環境を構築する。「AIでまとめたようなコンテンツで埋め尽くすのではなく、自分の体験やアイデアといった一次情報になり得るコンテンツを集め、AIに評価・参照されやすい場所を作る」と今氏は語る。

 また、コンテンツホルダーへの公正な対価還元の機会を模索する。「noteのようなC2Cのメディアプラットフォームもそうですし、新聞社やオウンドメディアも対象になる」(今氏)。また、メンバーシップや仕事依頼などコンテンツ以外の人対人の価値やサービス提供したり、LLMで大幅に強化された自然言語処理能力を用いて、粗悪記事を駆逐したり、クリエイターのコンテンツをリコメンドすることも考えられるという。

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