Google Analyticsを無料で提供するとグーグルが発表したとき、一部の人は「有料ツールはもちろん、機能の劣る無料ツールも駆逐されてしまう」と予想しましたが、実際にはそうはなりませんでした。Google Analyticsはビーコン型のアクセス解析ツールであり、解析方式が異なったり、同じビーコン型でもGoogle Analyticsを上回る性能・機能を持ったりするツールは、Google Analytics登場以降も、有料、無料を問わずそれぞれの特長を活かして生き残ったのです。
では、解析方式の違いは、Google Analyticsにどんな長所を与え、どんな短所をもたらしているのでしょうか。単なる座学では「現場でプロが培った」にはなりませんので、ASCII.jpの実データを使って説明しましょう。
Webサイトを訪れる人間ではないお客様――ロボット
「Google Analyticsは無料のうえに機能も豊富。他のアクセス解析ツールを使う理由なんてあるんでしょうか?」――Google Analyticsの機能が豊富であることを否定する人は誰もいません。しかし、Google Analyticsでは分からないこともたくさんあるのです。たとえば、Webサイトにロボットのアクセスがどれだけあるのかは、Google Analyticsではまったく分かりません。
「ロボット」とは、人間の操作ではなく、自動でWebサーバーにアクセスするプログラムのことです。検索エンジンの「クローラー」とも呼ばれるロボットは、Webページのリンクをたどって、新しいページがないか、更新されたページがないかを探し、Webページの内容を取得していきます。また、RSSリーダーが、定期的にRSSフィードの更新を確認しにくるために実行するプログラムもロボットです。
こうしたロボットによるアクセスが実際にどのくらいあるのでしょうか。同じグーグルのアクセス解析ツールで、Google Analyticsの元になった「Urchin 6」はロボットによるアクセスを計測し、Google Analyticsはロボットによるアクセスを(完全ではありませんが)無視します。試しにASCII.jp内のあるドメインについて、Urchin 6とGoogle Analyticsで同じ期間のページビューを見比べてみましょう。それぞれのツールで測ったページビューを集計して作ったのが下のグラフです。
Urchin 6では6940万5589ビューなのに対し、同じ期間のGoogle Analyticsでは4047万8356ビュー、その差2892万7233ビューの大半、Urchin 6によるページビューの約42%がロボットと考えられるのです。
さらに、日ごとの総ページビューとロボットのページビューを調べたのが以下のグラフです。
ロボットによるアクセスは、日によって変動があり、もっとも多い4月5日の場合、総ページビューの約49%、もっとも少ない4月20日の場合、35%がロボットです。1年を通じてみると、ロボットによるアクセスの方が人間よりも多い日も数日あり、「人間以外によるアクセス」というWebのもう1つの側面が見えてきます。
「Urchin 6はどうしてロボットによるアクセスを計測するんでしょうか? 人間以外のアクセスなんて計測する意味すらないでしょう?」――実は、Urchin 6とGoogle Analyticsは別の目的のために作られたアクセス解析ツールなのです。次ページでは、アクセス解析の目的について説明しましょう。
※Urchin 6では、「UTM(Urchin Traffic Monitor)」という機能があり、JavaScript とCookieによりGoogle Analyticsのようにセッションを記録し、Webブラウザーを識別できるようになります。多くのロボットはJavaScriptの実行機能がありませんので、UTMを使うことでUrchin 6でもGoogle Analyticsとほぼ同数の解析結果が得られるようになります。