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すっきりわかった!仮想化技術 第6回

製品例からみるストレージ仮想化

サーバだけじゃない!ストレージ仮想化の重要性

2009年06月08日 09時00分更新

文● 阿部恵史(ネットアップ株式会社 ソリューション マーケティング部 部長)

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実際の製品と機能

 ここまで仮想化環境に適した仮想化ストレージに必要な機能を説明してきた。ここで実際の製品にこれらの機能がどのようにインプリメントされているか、見てみよう。

 図5はネットアップ製品の仮想化インフラポートフォリオだ。これらの製品は、その利用規模・利用目的や形態によらず、また接続プロトコルがFC-SAN、IP-SANあるいはNAS(NFS、CIFS)に関わらず、単一アーキテクチャの専用OSである「Data ONTAP」がすべての機能を提供できるユニファイドストレージアーキテクチャを採用している。このこと自体がすでにストレージ仮想化であるともいえるだろう。

図5 ネットアップの仮想化ストレージ製品群

FlexVol

 Data ONTAPでは複数のRAIDボリュームを「アグリゲート」という共有リソース管理環境を提供する技術によって集約し、この共有リソースプールから単一の仮想ボリュームを作り出す機能(FlexVol)を提供している(図6)。RAIDグループの境界をまたいだボリューム作成は、従来のストレージでは実現できなかったことだ。

図6 複数のRAIDボリュームをアグリゲートで統合管理する「FlexVol」

 そしてこの仮想ボリュームは実際の物理容量以上の容量を持つ仮想ボリュームをサーバまたはアプリケーションに提供するシンプロビジョニング機能も備えている。

FlexClone

 本番環境のデータを複製して開発やテスト環境構築を行なうといったような用途で、実体は1つなのに、あたかも複数のデータボリュームが存在するように見せられる「仮想クローニング」の機能(FlexClone)がある(図7)。Data ONTAPの仮想クローニングは、独自の実装により、オリジナルのボリュームをあたかも別のボリュームのように見せかけることができる。この方法ではデータの物理的なコピーが不要のため、瞬時に複製を作成可能だ。

図7 瞬時にボリュームを複製するFlexClone

 ボリュームの実体は1つで、差分に相当するデータだけが格納されるため、容量も大幅に節約できる。

 またボリュームの利用効率を向上させ、物理的な全体容量を削減させるため、内容が同じ複数のデータブロックを1つに集約する重複排除機能がある。ボリューム内のデータの重複をブロックレベルで検出し、たとえば4つのデータブロックがまったく同一であれば、それぞれのデータブロックを利用しているボリュームあるいはファイルへのリンク情報だけを残してデータブロック自体は1つに集約してボリューム使用量を削減することができる。

MultiStore

 こうしたボリューム単位の仮想化機能のほか、単一コントローラ、単一OS上に、仮想的に複数の論理OSを生成し、サーバまたはアプリケーションに対してそれぞれ独立したストレージシステムとして認識させることができる「MultiStore」機能も提供されている。

Vシリーズ

 従来、上記の機能はネットアップ製品でのみ提供可能であった。だが現在では、このData ONTAPという専用OSを搭載したコントローラのみを仮想化アプライアンスとして提供する「Vシリーズ」という製品がある(写真1)。Vシリーズはコントローラ配下に、ネットアップのディスク製品を接続する代わりに他社製のFC-SANストレージを接続し、サーバやアプリケーションにはネットアップの製品のように見せられる。

写真1 VシリーズハイエンドのV6070

 これによりユーザーは、以前購入した他社製のストレージでは実現できていなかった機能、たとえばシンプロビジョニング機能や重複排除機能など最新のストレージ技術を、Vシリーズを介して享受できるようになる。つまり、アーキテクチャの違いを抽象化して、異機種混在環境においてもData ONTAPが備える最新のストレージ仮想化技術が利用可能となる。

ストレージグリッド

 さらに、このような仮想化機能は、これまで単一コントローラまたは単一クラスタ構成においてのみ実現されており、いわば筐体内に限定されていた。しかしData ONTAPでは、さらにこれを筐体間、つまりコントローラの境界を越えて複数のストレージコントローラ配下のリソースを束ねて単一の共有リソースプールとして管理することができる。これによって、分散ファイルシステムの作成機能や筐体をまたいで単一ボリュームを生成する筐体間ストライピング仮想ボリューム機能、単一の名前空間を実現し、複数ストレージシステム間でのユニークな名前解決の機能を提供するグローバルネームスペース機能などを提供する。これによって、効果的にストレージグリッドを構成することができるようになった。

さまざまなレベルのストレージ仮想化技術

 ストレージ技術は着実に進化を遂げており、ひと昔前であれば商用UNIXサーバでも実現できていなかった機能を、ストレージ単体で提供できるまでになっている。

 物理的なリソースを抽象化して、その物理境界やアーキテクチャの違いを吸収することを「仮想化」と定義すれば、ストレージ分野においてはRAID、すなわち複数のHDDを束ねてあたかも1つのディスクのように見せかけることは、もっとも基礎的なレベルの仮想化技術といえる。

 その上に、ここまで見てきたようなさまざまなレベルでの仮想化技術が提供されており、何に対して何を仮想化するのかが、多様化している。

 これらのことを踏まえ、ITシステム構築の際には、サーバ仮想化に加えてストレージ仮想化も併せて検討し、システム全体の柔軟性、可用性の向上を目指すことが重要となる。

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