仮想化とは何か
近年、仮想化というキーワードがネットワークやサーバの業界で騒がれるようになっている。多くのインテグレータで仮想化対応を謳ったソリューションを展開し、さまざまな製品が用意されている。
ここでいう仮想化とは、1つの物理ハードウェアを分割して、複数のハードウェアが動作しているかのように見せたり、逆に複数の物理ハードウェアを統合して、1つのハードウェアが動作しているように見せたりする技術である。仮想化(Virtualizaion)の元となる「Virtual(仮想)」という単語を辞書で調べると、「実質的な」という言葉になる。ハードウェア実体とは独立して、ユーザーが「今ほしいもの」と実質的に同じ機能やサービスが実現できれば、それが仮想化だといえる。
仮想化技術そのものは50年ほど前からすでにあり、大型のシステムなどでは利用されていた。しかし、近年のハードウェアの高性能化・低価格化や、仮想化技術の発達などによって、一般のコンピュータやサーバでも簡単・手軽に導入できるようになった。
仮想化のメリット
仮想化による最大のメリットは、限られたハードウェアを分割して機器やサービスを複数存在するように利用できるという点にある。たとえば1台の物理マシンでたくさんの仮想マシンを動作させたり、1台のスイッチで複数のVLANを構成したりすることができる。たとえば、負荷の低いサーバを多数集めて、1台のサーバ実体の上で動作させれば、リソースの有効活用になる。逆に、サーバの負荷の高いときは、複数のサーバ実体を使ってより高性能なサーバを生成することで、大きな負荷も処理できるようになる。
さらにこのメリットを推し進めると、より柔軟な構成が可能になる(図1)。従来の物理ハードウェアでは、ハードウェアやシステム全体の構成変更をするために、ハードウェアの変更計画やシステムの停止計画を立てたり、実際にハードウェアを入れ替える作業を行なったり、そのあとの安定稼働の確認など、膨大な手間がかかっていた。しかし、仮想化された環境では、リソースさえ余っていれば管理画面から設定を変更するだけでよいため、手元のキーボードとマウスであっさりと構成変更をすることが可能になる。また、物理的な作業が大幅に減らせるため、たとえばサーバマシンをデータセンターに設置しているような場合に、遠隔地に機器を置いていてもわざわざ現地に赴くことなくリモート操作で作業を済ませることができるのだ。
もう1つ、「位置の透過性」という点もメリットとして挙げられる(図2)。ユーザーには仮想化されたマシンやストレージは見えるが、仮想化環境全体は見えないし、むしろシステムが仮想化されていることにも気付かずに利用することが可能である。一方の管理者は、ユーザーが利用中でも、ユーザーに気付かれずにメンテナンスなどの作業を行なうことができる。
現在、注目を集めているこうした仮想化技術は、おもに「ネットワークの仮想化」「コンピュータの仮想化」「ストレージの仮想」の3つに分けられる。以下では、これらの仮想化技術を用いた例を簡単に紹介しよう。
(次ページ、「ネットワークの仮想化」に続く)
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