日本が世界に誇る腕時計ブランドのひとつに、セイコーがある。先日、そのセイコーの腕時計「グランドセイコー マスターショップモデル スプリングドライブGMT」(以下、スプリングドライブGMT)を「戦略的」に衝動買いしてしまった。お値段は、標準価格で57万7500円。またしてもウルトラ金欠時代に突入だ。
大枚をはたいてでもほしかった理由は、スプリングドライブGMTが採用しているセイコー独自の駆動機構「スプリングドライブ」にホレてしまったから。その技術的な背景を知ってしまったら、どうしても手元に置いておかざるを得ない。
「クオーツの父」が25年以上かけて生み出した
スプリングドライブは、腕時計において、針を動かすという「心臓」の役割を果たしている。その特徴は、「機械式」のように秒針が滑らかに動き、「クォーツ式」のように時刻が狂いにくいというもの。セイコーは、このスプリングドライブを世に送り出すために、27年にも渡る歳月を費やしている。
時計に詳しくない人のためにもう少し補足しておこう。
機械式は、ゼンマイのほどける力を利用して針を回すという、歴史と伝統がある駆動方法だ。機械式は、さらに「手巻き」と「自動巻き」に分けられる。「手巻き」は、指先で竜頭(りゅうず)を回してゼンマイを巻く。それより後世に発明された「自動巻き」は、半円形をした「回転錘」を内蔵し、手首をふることでこの錘をクルクルと回して、自動的にゼンマイを巻くことができる。
一方で、クォーツ式は、水晶振動子(クオーツ)を使って時刻を合わせるというのが特徴だ。水晶振動子は電圧をかけると一定の周期で振動する。この周期に照らし合わせることで、アナログ表示では針の動きを、デジタル表示では数字の進み具合を制御している。
クオーツ式では、水晶振動子やIC回路を動かすためにボタン電池が必要になるものの、機械式よりも時間のズレを抑えられるのがメリットだ。ちなみに1969年、クオーツ式の腕時計を世界で初めて市販化したのもセイコーだった。
スプリングドライブは正確に言い表すと、この「自動巻きの機械式」と「クォーツ技術」が合わさったものだ。ボタン電池の代わりに自動巻きという「小さな発電所」を内蔵し、クオーツの正確な速度調節で時を刻み続ける。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである。
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