2008年は「スマートフォン元年」として、iPhoneやBlackBerry Boldなどが発表されている。この動きを「歓迎している」ブランドが台湾のHTC社である。2008年5月に発売以来、世界で300万台を出荷するTouch Diamondはなぜ強いのか。HTC NIPPON 代表取締役社長のデビッド・コウ氏、ビジネス・ストラテジー&マーケティング本部ディレクター田中義昭氏に聞いた。
世界で培った経験は日本でも活用
HTCが「日本市場にとっても戦略的な製品」と位置付けているのがTouch DiamondとTouch Pro。前者はイー・モバイル、ソフトバンク、NTTドコモから、後者はソフトバンクとNTTドコモで2008年の冬ケータイとして発表された。
コンパクトなボディのTouch Diamondはほとんど全ての操作をタッチでこなす。スマートフォンでケータイらしい操作感覚を実現したスマートフォン。Touch Proはタッチパネルに加えてスライド式のフルキーボードを備えたタイピング入力重視のスマートフォン。「Touch or Type」という選択をユーザーに与え、世界的にも好評だ。
しかしこの大ヒットモデルを作り出すまでには、HTCの多くのスマートフォンが採用しているWindows Mobileプラットホームに対する長い蓄積が存在している。
「Windows Mobileには10年以上前、まだWindows CEと呼ばれていた頃から取り組んできました。HTCブランドになる以前から、PDAやスマートフォンを開発しています。現在、Windows Mobile端末の約8割をHTC製品が占めています」(コウ氏)
HTCは新しいプラットホームの製品をすぐに出荷するメーカーとして、コンシューマーだけでなく業界からの評価も高い。最近ではGoogleのAndroidを搭載した端末をアメリカT-MOBILEがリリースしたが、この端末を製造したのもHTCだ。
「Windows Mobile 6.1を搭載する端末をリリースしたのもHTCですし、今年10月に発売したAndroid端末もHTCが最初。最新のテクノロジーを短い期間で市場に提供する。つまり効率的に最先端の技術を提供できるのがHTCの強みです」(コウ氏)
このように、HTCには10年来のPDAやスマートフォンのノウハウが高度に蓄積されており、それが最新プラットホームに対応する端末を素早くリリースして成長を牽引する原動力となっている。特にWindows Mobile端末の世界ナンバーワンのシェアには目を見張る。
HTCの強みは、最新のプラットホームやOSのバージョンがリリースされてから最も早くケータイをリリースする技術力だ。それは、Windows MobileであってもAndroidであっても同じこと。この経験は、HTCが独自のブランドでスマートフォンを展開し始める前から行なってきた、長年の製造受注の経験が活きている。
1997年に台湾で法人を設立したHTCの成長のきっかけは、PalmなどのPDA製造受注だった。Windows CE、Windows MobileのPDAやスマートフォンの製造を一手に引き受けてきた。自社ブランドの端末をリリースしている現在でも、2008年初冬に登場したソニー・エリクソンのクールなWindows Mobile端末「XPERIA X1」もHTC製として知られている。
Windows Mobile端末のメーカーとして確固たる地位を築いているが、「Windows Mobileが全てではない」とコウ氏は語る。
「現在はWindows Mobileとの結びつきが強く、それはとても大きな強みとなっていますが、Windows Mobileが全てではありません。AndroidもGoogleに買収される前から、技術に関して世界レベルで検討をしていました。またSymbian OSもあります。元々いろいろな可能性を検討してきましたし、これからも1つのプラットホームに肩入れせずフレキシブルに対応します」(コウ氏)
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