「絶対サポセン黙示録」は、大手PCメーカーを渡り歩くFOX-兄貴とその仲間が、電話サポート現場で遭遇したトンデモ事例を紹介するサイトだ。笑える奇抜なクレームの数々が受けて、インターネット黎明期からトップクラスの人気を誇っており、間もなく10周年を迎える。
大手企業のサポート窓口の人がその内容の一部を公表するという、見方によっては内部告発ともとらえらえられる際どい内容ながら、長い間脚光を浴び続けているのは紛れもない事実。少なくとも炎上して閉鎖するといった事態には至っていない。いったい、FOX-兄貴はどんな予防線を張っているのだろうか。返ってきたひとつのキーワードは「責任」だった。
「顔の見えるインターネット」第29回は、そんなFOX-兄貴にサイト運営の原動力、そして危機管理の妙をうかがった。
絶対サポセン黙示録
1998年8月31日にスタートした古株サイト。実際はFOX-兄貴が運営する「兄貴の館」のいちコーナーだが、最盛期には単独で1日2万人以上が訪れていた。読者投稿型のコーナーも用意しており、こちらはPC業界以外のネタも多数載せられている。
1、2週間で上司にバレた
── まずは、絶対サポセン黙示録を作ったいきさつを教えてください。
FOX-兄貴 最初、プロバイダーがウェブスペースを提供していたので、軽い気持ちで「兄貴の館」を始めました。その後、2ヵ月くらい経って何かコーナーを作りたくなったんです。そこで思い付いたのが、就職したばかりだったサポートセンターのネタでした。
もうとにかくストレスが溜まる職業でして。サポートセンターに電話をかけてくる人の多くは、メーカーやその製品に対して不満を抱えてたり、どうしていいか分からなくてわらにもすがる気持ちだったりするわけです。
そういった重い感情に対して、期待された答えを提示しなければならない。すごいプレッシャーですし、誠実に対応しても怒られることもあります。とにかく、ネタとして楽しんでもらうことを含めて、そういう世界を皆に知ってほしかったんです。
── なるほど。それは会社に内緒で始めたわけですよね。
FOX-兄貴 そうなんですが、1、2週間で上司にバレました(笑)。何しろ最初は会社で作ってましたからね。サポート対応中、お客様にパソコンの再起動をお願いすることがよくありまして、その待ち時間の1分くらいを使ってFTPにアップしたりして。
当時はアナログ回線なので、自宅で打ったテキストをフロッピーディスクに入れて、会社の回線でアップするということもしょっちゅうでした。今思えば、訴えられたら絶対に負けるような行為ですね。
── (笑)。よく問題になりませんでしたね。
FOX-兄貴 上司がすごいい人で、注意は受けましたが、僕には「会社名さえバラさなきゃいいよ」というふうに聞こえまして。まあ、それでなくても、実名や素顔も載せていませんし、会社名がたどれるような痕跡は一切残していませんけどね。
── 現在まで通用する予防線を最初から張っているのが、特筆すべき点だと思うんです。
FOX-兄貴 いやあ、当時は相当クレームをいただきましたよ。「こんなネタで笑わせようとするなんてけしからん」とお叱りを受けたり、手当たり次第に大手PCメーカーに直接クレームを付ける人が出てきたり。
それでも当時はまだ、個人情報に関して敏感ではなかったから助かったというのもあるでしょう。サポセン開始から1、2年経った頃に色々なメディアで紹介されて、一気にアクセス数が増えたあたりから、意外と何も言われなくなりましたね。
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