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ちっとも説教臭くないエコロジー企画展

【レポート】水をテーマにしたデザイン&アートイベント――「Water展」

2007年10月15日 21時00分更新

文● 千葉英寿

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我々が口にする前から、多くの国や場所で
多量の水が使われているという事実を知る「券売機」

 エントランスから地下の会場に降りてくると足下に円形のスポットが落ちている。天井から投影された光の円の中に人が入り込むと、人の動きにあわせて、あたかも池か水たまりに足を入れたかのような水紋が現われる。同時に壁に投影された円には、人が動いた所に水墨で描いたような跡が影のように映し出され、まるで月のような形に変化する。

水円/アラカワケンスケ、三浦 望、共同開発:ソリッドレイ研究所

水円/アラカワケンスケ、三浦 望、共同開発:ソリッドレイ研究所

 この作品「水円」は、「さくらスケープ」(2005年度グッドデザイン賞入賞)などのウェブサイトのディレクションなどを手がけるインタラクティブメディアデザイナーのアラカワケンスケ氏と、VJソフトの開発などを手がけてきたプログラマーの三浦 望氏、VRシステムなどの開発を手がけるソリッドレイ研究所が共同開発したもの。

水球儀/竹村真一

水球儀/竹村真一(製作:(株)GKテック 協力:Earth Literacy Program、(株)ゼネシス、(株)ウェザーニュース)。表面の7割が海である水の星、地球をリアルタイムに表現している「水球」。横のコントロールパネルで操作し、雲の動きや台風、海流などの現在の地球を宇宙的な視点で見ることができる

 床に投影された映像に触れると反応するこの映像システムのベースとなったのは、ソリッドレイ研究所のタップトークというシステムで、すでに多くのイベントや公共施設などで使われているが、今回の展示のために円形に投影するシステムを新たに開発した。

H0H/海藤春樹、井出祐昭

H0H(ホッ)/海藤春樹、井出祐昭(協力:(有)アースクエイク、(有)フェーレンコーディネート、(株)ワンダーランド)。眠っている水の記憶を呼び覚ますかのような、映像と水音の空間



 メイン会場につながる通路には、あたかも社員食堂の入り口かのように食品サンプルが並んでいる。牛丼、味噌汁、ハンバーガー……と、普段口にしている品目ばかりだ。サンプルショーケースの隣には券売機(?)が設置されている。これが冒頭で紹介した「牛丼 2000リットル」というカードを発券した「見えない水の発券機」だ。筆者がWater展にいっぺんに引き込まれたのが、“牛丼一杯に使われる水の量は?”という、見えない水(バーチャルウォーター)の消費実態を表現したこの作品だ。サンプルショーケースの食品を選んで発券機のボタンを押すと、その食品の水消費量を記した券が発行されるという仕組みだ。このシステムはケータイサイト「携帯版バーチャルウォーター」(http://v-water.jp)でも楽しむことができる。今、自分が食べているものを検索してみるのも面白いだろう。

牛丼(食品サンプル)と「見えない水の発券機」。牛丼 2000リットル=2リットルのペットボトル約1000本分だ

H0H/海藤春樹、井出祐昭

「携帯版バーチャルウォーター」竹村真一(データ制作:沖 大幹、東京大学生産技術研究所 沖・鼎研究室)

 「牛丼 2000リットル」=2リットルのペットボトル約1000本分は、牛の餌となる牧草を育てる水、牛が飲む水、米(稲)を育てる水など含めると、牛丼1杯の原材料にほぼそのぐらいの量が使われているということなのだ。牛丼に使われる水と言われると、単純に調理に必要な水くらいしか思い浮かばないものだが、実際には背後にそれだけの水が必要になのだ。佐藤氏は「牛丼を食べるために、牛肉を大量に輸入するということは、大量の水資源を他国に頼っているということ。しかも、このことは水で世界を見ることのほんの入口でした」と語っている。

「ことばな」(協力:(株)イノウエインダストリィズ、松徳硝子(株))。ことばなは、試験管の中にはさまざまな水にまつわる言葉が収められた言葉の一輪挿しだ。エントランスから会場に降りてくるスロープやメイン会場前のエリアに60本が展示されている

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