家電やパソコンの街よりアニメとオタク文化の発信地の呼び名が定着した東京・秋葉原の秋葉原UDXで今月4日から4日間、アニメーション関連産業の一大イベント「JAM2007」(Japan Animation Contents Meeting 2007)が開催された。主催は中間法人日本動画協会と経済産業省。JAM2007とは、JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)のオフィシャルイベントの一環で、アニメコンテンツを活用する新しいビジネスモデルの創造を目指すことを目的としたアニメビジネスの見本市だ。
正義のロボット・アトムが
やわらかくなっちゃって、撤退~!?
メイン会場となったアキバスクエアでは「アニメアイディア・マーケット」の展示が行なわれた。展示内容は日本のアニメのキャラクターやストーリーなどを使用した新たなビジネスや商品、技術などのアイデアを事前に募集し、その応募作品を紹介したり、その場で商談を行なうビジネスマッチングの場とする「アニメ・チャレンジオーディション」と、アニメコンテンツを利用した“新しい発想”の企画を実現化した企業・団体が、その商品やビジネスモデルなどを展示、紹介する「アニメ・ビジネスショーケース」の2本立てとなった。
アニメ・チャレンジオーディションには、素材にするキャラクター、作品を各著作権者が公式に提供して行なわれており、いわば“公式な二次創作”と言えるもの。アニメ業界としては、従来より一歩踏み出した取り組みと言えるだろう。
中でも注目を集めたのが、大人気Flashアニメ「やわらか戦車」の(株)ファンワークスが「鉄腕アトム」を題材に提案した「やわらかアトム」だ。これまでも、やわらか戦車はYouTube上の「やわらか戦車チャンネル」でさまざまなアーティストとのコラボレーションを行なってきたが、今回の提案は日本が世界に誇るスーパーアーティスト、手塚治虫氏が生み出した不朽のロボットキャラクター「鉄腕アトム」とやわらか戦車という、夢のコラボレーションだ。
展示ブースで紹介された映像はすでにかなり作り込まれており、やわらかアトムの「ぬいぐるみ試作品」も出品され、企画としてはほぼ完成されたものと言って差し支えないだろう。キャラクターもアトム以外に、宿敵・プルートやお茶の水博士を翻案した“お茶の水ジェーン”などが登場している。同社の代表取締役の高山 晃氏は「今後の具体的な展開は未定です。ぬいぐるみの試作も今回、展示させていただいたアトムのみで、これからラレコさんにもほかのキャラクターを詰めてもらわなければなりませんし。プルートはやわらかいのか固いのか、とかね(笑)」と語っていた。
USBコネクターを擬人化したMr.ウスビ
静岡から出展したクリエイター集団、プラネットプランターは、USBメモリーのコネクター部分をキャラクターの顔に見立てたキャラクターUSBメモリー「Mr.ウスビ」を企画し、紹介していた。こうしたUSBメモリーには、企業の社名を入れたものはもちろん、寿司や動物に見立てたマスコット型や変形型もすでに数多く出ているが、Mr.ウスビはUSBメモリーに単にキャラクターマスコットを被せただけではなく、USBメモリーのコネクター部分が「顔に見える」ことに着目し(並んだ2つの凹みを目に、横の幅広い1つの凹みを口に見立てる)、そこにラバーやプラスチック素材で成形したボディーとヘッド部分を合わせたユニ-クなもの。
これだけなら単なる冗談商品として片付けられかねないが、プラネットプランターの企画・渉外担当の間 健太郎氏は「使用したキャラクターのコンテンツをメモリーに収める事で新たなメディアとして活用いただく事もできます。アニメだけでなく、アーティストと組んでオリジナルのグッズとしても展開できると思います」と語っており、アニメにとどまらず、幅広く展開する可能性がありそうだ。
コンテンツゲート(株)は、アニメ作品の「海外モバイル配信によるプリセールス支援」を提案した。同社は携帯電話機などのモバイル端末を中心に、北米/ EU/アジアを主な配信地域とした世界規模のコンテンツ配給ネットワークを持っており、アニメ作品のパイロットエピソード(売り込み用に作られる短編映像)を初期段階で露出することで、長編やシリーズ作品の完成前のプリセールスを促進しようというプランだ。
日本のアニメ作品は世界で高く評価されているものの、プリセールスの手段が限定されており、多くのビジネスチャンスをむざむざ逸しているとされる。その盲点を補う可能性を持つこの提案は、アニメのみならず、日本の映像作品をはじめとしたコンテンツの輸出に大いに寄与すると期待される。
(株)キュー・テックは、パソコン上で「絵コンテ本」をデジタルブックとして読む際に、その完成アニメーションである作品のDVDが絵コンテと完全同期して再生・表示できるソフト「絵コンテリンクDVDプレイヤー」を出展した。同社は、今年4月に耳の不自由な人にも映像を楽しんでもらうことを目的として、映像作品のDVDに日本語字幕を付けて鑑賞できる仕組み「ウェブ-shake 字幕をつけ隊!」を発表し、映像のバリアフリー化を進めている。
「アトム・フォント」は工藤聖子さんが提案するオリジナルフォントだ。アトムをモチーフにしたオリジナルフォント(アルファベットのみ)を、パソコンで使用することを前提に制作したもので、「文字を打つのも楽しくなるだろうな……という願いを表現してみた」と言う。
異色の提案と言えるのが東京工房による「きゃらBIZEN」。備前焼とフィギュアという、新旧の日本文化における異なるカルチャーのコラボレーション作品で、うわぐすりを使わない備前焼は通気性が高く、水をきれいにするというエコフィギュアだ。今回の出展にあたって、(有)アニメイノベーション東京のアニメ制作支援企画“動画革命東京”の第一期支援作品である「コルボッコロ」から、自然の精霊コルボッコロをモチーフに制作された。
今回のアニメ・チャレンジオーディションとは異なるが、次世代のアニメコンテンツクリエイターの発掘・支援のために、NPO法人映像産業振興機構と中間法人日本動画協会が主催し、公式に一時提供された作家作品(今回は手塚治虫氏)を使って、自分風にアレンジした作品を投稿できる、みんなの投稿コミュニティサイト「OPEN POST」も紹介されていた。