高感度時のノイズリダクションを追加
── センサーに関しては、CMOSを継続的に採用されていますね。
小島 CMOSセンサーに関しては従来同様、キヤノンの綾瀬事業所で内製しています。継続する中で、技術的にも洗練されてきました。
── 今回の特徴のひとつにノイズリダクションの強化が挙げられていますが。
竹内 センサーの基本的な仕組みはEOS 30Dと変えていませんが、画素数が増え、感度も向上させなければならないということで、ノイズ対策にはさらに気を使っています。
また、撮像素子側のノイズ低減に加え、エンジン側(DIGIC III)の対応も行なっています。今回からカスタムファンクション内で「高感度撮影時のノイズリダクション」も設定できるようにしました。これは高感度時で特に有効に機能しますが、すべての感度で効果が得られます。ここがEOS 30Dからの改善ポイントになるでしょう。画像処理エンジンを「DIGIC II」から「DIGIC III」に変えたことが利いてくる部分です。
── 撮像素子の進化と画像処理エンジンの両面からノイズ低減に取り組まれたわけですね。
戸倉 当然ながら、画素数がアップしたからといって、画質が劣化してしまってはいけません。その点はきちんとバックアップしています。
撮像素子に関しては、まず構造そのものを改善して、光をより多く取り込めるプロセスに変えました。電気のノイズを抑えるという観点では、従来同様「第2世代のノイズ除去回路」を使用していますが、チューニングを加えて作り込んでいるので、この部分でのノイズ低減も行なわれています。
これがハード的な部分の改善です。こうして出力された信号に対して、カスタムファンクションで、画像処理エンジンを使ったノイズ除去の設定を加えたというのがEOS 40Dにおけるノイズリダクションの概要です。
── センサーに関しては、集光効率の向上やフォトダイオードの開口率アップといった改善を加えたということでしょうか。
戸倉 そのとおりです。
高画素数のニーズはまだあり、要望には応える
── 今回の新機種でEOS Kiss Digital X、EOS 1DmarkIIIの3モデルの画素がそろいました。APS-Cクラスであれば、1000万画素程度で十分というお考えでしょうか。
戸倉 個人的な意見ですが、ひとつ感想として持っているのは、ユーザーさんはまだまだ高画素化を望んでおり、市場要求がある限りは高画素化を進めていかなければならないということです。さまざまなハードルがありますが、課題を乗り越えながら、新しいセンサー開発に取り組んでいきたいと考えています。
── 撮影機能の強化もEOS 40Dの特徴です。AFセンサーは新開発されましたね。すべてが高精度なクロスタイプセンサーとなり、さらに中央部に関しては、より高精度な千鳥配列のセンサーを採用されています。
小島 はい。測距点のうち、中央の3点に関しては千鳥配列のセンサーを使用しています。このセンサーは画面を左右に分割する形で縦に3つ並んでいますが、通常の上/中/下それぞれの位置での測距に加えて、3つのセンサーを合わせて使用することもできます。大きなセンサーで広い範囲を見ることで、ピンボケの度合い(デフォーカス)が大きな場合でも「一発合焦」を出せるようにしようというのが狙いです。
戸倉 AFセンサーは、まず最初にフォーカス位置からどのぐらいズレがあるかを予測して、それから動きだします。AFを高速化するためには「どれぐらいズレているか」が最初に分かることが大事です。ピントのズレ量が大きい場合には、レンズのピントを前後に動かして最適なレンズ位置の予測を行なう操作が加わります。これが省略できれば、AFの高速化にもつながります。
訂正とお詫び AF測距点に関する情報を修正しました(10月12日)
── 毎秒6.5コマの連写はクラス最高とのことですが、上限値は何によって決まるのですか?
小島 大きな理由のひとつに、撮像素子からの読み出し速度がありますね。
戸倉 毎秒6.5コマの仕様を実現するためには、メカ(機構設計)とエレキ(電気回路設計)の両方が追いつかないといけません。エレキの部分では大きく2つの側面があります。ひとつは画像処理の現像部分や読み出しといった信号処理に関係した部分、もうひとつがAF測距などカメラの機能部分に関するものです。メカに関しては、まずは動作を速めなければいけません。かつAFに安定した信号を出すために、ミラー位置を早く安定させなければなりません。
こういった要素が融合して初めて毎秒6.5コマというコマ速が達成されます。上でEOS 40DはEOS 30Dを根本から見直したと述べましたが、EOS 30Dのボディーをそのまま持ってきたのでは毎秒6.5コマの連写は成立しなかったのです。
── ミラーの話で思い出しました。シャッターを切った後のパコーンという音は独特ですね。
戸倉 賛否両論がありますが。音に関しては、今後取り組むべき課題という認識はありますね。特にノイジーな部分は嫌って設計していますが、さらに手を抜かずにやっていかなければならない部分と感じています。