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『俺は、君のためにこそ死ににいく』やフルCG版『銀河鉄道999』を制作

『Autodesk Maya』を使った映画・映像制作の現場を東映アニメーション・野口氏に聞く

2007年05月08日 16時11分更新

文● 千葉英寿

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『Autodesk Maya 8.5』日本語版の画面

日本語化された『Autodesk Maya 8.5』の画面

オートデスク(株)は、日本語化を果たしたプロユースの3D CG作成ツール『Autodesk Maya 8.5』を一般ユーザーに披露する“Autodesk Maya 8.5発表セミナー”を、4月中旬から全国各地で開催している。同セミナーではAutodesk Maya 8.5の最新機能を紹介し、デモを行なうとともに、国内の映画制作ならびゲーム制作のユーザー事例を紹介するなど、映像制作の現場にMayaの導入を検討しているユーザーにとっては貴重な情報が得られるセッションとなっている。このセミナーツアーにおいて、映画業界での活用事例として講演を行なっている、東映アニメーション(株) 製作本部デジタル映像部のCGスーパーバイザーである野口光一氏に直接話を聞く機会を得た。

Maya 8.5日本語版の特徴と日本語化された内容

野口氏は、海外で多くのCGやVFX(特殊映像効果)を用いた映画制作に参加し、帰国後は東映アニメーションに籍を置いて、VFX/CGスーパーバイザーとして、『デビルマン』『男たちの大和/YAMATO』『蒼き狼 地果て海尽きるまで』といった話題作、超大作を手がけるとともに、東映アニメーションが得意するアニメーション制作においても劇場版『ワンピース』や『デジモンセイバーズ』といった人気作品を手がけてきた、この分野の第一人者のひとりだ。

野口光一氏

東映アニメーションのCGスーパーバイザー、野口光一氏

そして野口氏は、今月12日に公開となる映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』のVFX/CG制作を仕上げ、現在は今夏に各地の大型映像施設で公開される『銀河鉄道999 星空はタイムマシン☆太陽系・恐竜絶滅編』のフルCGアニメ制作を手がけている。今回は、これらの最新作品における、Mayaを中心とした映像制作の舞台裏について語ってもらった。

映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』は、過日の東京都知事選で三選なった石原慎太郎氏が、製作総指揮/脚本で参加している総制作費18億円の超大作だ。太平洋戦争の末期、鹿児島県知覧(ちらん)から出撃する特別攻撃隊(特攻隊)の隊員たちの生き様を通して、わずか60数年前の過酷な時代を生きた日本人の想いを現代人に伝えよう試みている作品である。物語の終盤には、太平洋上での特攻機と米戦艦との戦闘や、特攻隊員たちの視点による特攻シーンなど、これまでの戦争映画では描ききれなかったリアリティーに溢れるシーンをCGとVFXを駆使して強烈なインパクトで描いており、作品が訴えるメッセージに深みを与えている。

映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』の1シーン

映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』より。(c)2007 『俺は、君のためにこそ死ににいく』製作委員会



―― 映画では特攻シーンが特に印象的ですが、これはどのように制作されたのでしょうか?

野口 そうですね。作品中、特攻シーンが3ヵ所に出てくるのですが、初めて特攻したシーンを記録フィルムを再現する形で“銀残し”(ぎんのこし。映像のコントラストを強めて、渋い色合いにするためのフィルム現像の手法)っぽく表現し、後半にいくに従って生々しく、最後はCGを使ったリアルな特攻シーンに持っていく形になりました。CGは250カットでやることが決まっていたので、限られた予算で効果的に表現できました。結果、映画としても真実味が増し、演出的にもよく、脚本としても満足できるものになったと思います。

―― CGを多用したシーンは後半に集中しているということでしょうか?

野口 すべてがCGというわけでもなくて、CGあり、実写あり、ミニチュアもありとなりました。最後の特攻シーンでは、知覧から沖縄まで行くのですが、その途中の徳之島上空は実際に空撮したり、沖縄でのシーンでは空母はCGで描きましたが、すべてをCGで描くのは無理がありますのでフィリピンに撮影に行きました。フィリピン海軍が当時の駆逐艦を持っていたので、それを使わせてもらい、実写で撮りました。



Maya+mental ray+Fluidで作業はほぼ完結
爆発シーンは本物の駆逐艦で炎を出したところを撮影

CGと実写を合成していく手順の一コマ

CGと実写を合成していく手順の一コマ。(c)2007 『俺は、君のためにこそ死ににいく』製作委員会

―― これまでの作品における制作と異なる点はありますか?

野口 『男たちの大和』ではフルCGはやっていなかったのですが、『三丁目の夕日』や『LIMIT OF LOVE 海猿』などの作品で“CGカットがよかった”という実績があって、そろそろいけるんじゃないか、という感じになっていました。実際、当初はミニチュアを使うことを想定していて、そんなに多くのフルCGカットを制作するとは思っていなかったのが、結果としてCGが多くなったわけです。それでもCGは全部で250カットで、男たちの大和が350~400カットぐらいなのに比べれば、これでも少ないんです。男たちの大和の場合は、ドラマパートにもCGカットが必要だったので多くなったということもありますが、本作ではドラマ部分は茨城などにロケにいって、古い町並みを使ったり、甲板の上でのシーンもなかったので。CG制作は、メインとなった特攻パートでは、(実写の)空撮をベースに貼付けるということが多くなって、ほとんどのCGは空撮絡みでしたね。

―― どういった環境でCG制作にあたったのでしょうか?

野口 男たちの大和の時は、海はMayaで、空は3ds maxで制作したのですが、今回は空だけで、スタッフも最初からMayaを使っていたこともあって、全体をMayaでやろうと決めていました。一番の問題はレンダラー(3次元モデルから2次元映像を生成する演算ツール)でした。やはり3ds maxの方がいいレンダラーがあるので、若干の不安もあったのですが、“グローバル・イルミネーション”(拡散する光をリアルに再現するレンダリング技法のひとつ)が使えるということで“mantal ray”(独mental images社のレンダラー)にしたのが意外に良くて、メインをmental rayにして、これに“RenderMan”(米ピクサー・アニメーション・スタジオ社のレンダラー)を加えて制作にあたりました。ただ、mental rayにはクセがあったり、組み合わせるMayaの新しいバージョン(Ver.8)にはバグもあったのですが、戦闘機の正面の絵が意外に細かくて、トータルで考えた場合に「絵がいいmental rayでなんとかしたい」ということになり、結局その時点でメインで使用していたMaya(Ver.7)で作業しました。

特に注力した黒煙、爆発のシーン

特に注力したという黒煙、爆発のシーン。(c)2007 『俺は、君のためにこそ死ににいく』製作委員会

―― 本作品の制作において、Mayaがよかった点は?

野口 大勢のスタッフで制作にあたる場合は、分業に向いているMayaがいいですね。今回も外注した部分は『LightWave』(米NewTek社の3D CGツール)で制作したのですが、FBX(3D CGの汎用的なファイルフォーマット)でデータ互換に問題はありませんでした。また、Mayaだと“MEL”(Maya Embeded Language、一連の動作や設定を記録して自動化できるスクリプト言語)があるので、カスタマイズしなければいけないこともあるのですが、逆にそれがいままでの資産になっているメリットでもありますね。また、今回の撮影で言えば、煙をまとっている絵や爆発などについては、まだCGでは(リアルな表現が)難しいところがあって、フィリピンでの駆逐艦の撮影の際には実際に炎を出した絵を撮って、それを加工しているんですが、黒煙については『Fluid』(『Maya Fluid Effects』。煙などの流体モーションを再現するエフェクトツール)で結構できるようになっていますね。今回も黒煙についてはMayaで完結しました。

CGと実写を合成していく手順の一コマ

CGと実写を合成していく手順の一コマ。(c)2007 『俺は、君のためにこそ死ににいく』製作委員会

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